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※キメツ学園ネタ。


近所のパン屋さんはとても人気だ。

母が用意する朝食の食パンは絶対そこのだし、おやつとして菓子パンもよく出てきていた。

通学路の途中にあるから、毎朝焼き立てパンのいい香りがするその店の前を通る。とても好きな香り。


「あっ、苗字先輩、おはようございます」

「うん、おはよう」

好きな香りを纏った後輩が店から出てくる。後輩はこの店の息子で、毎朝手伝いをしてから家を出るから、いつも焼き立てパンの柔らかくていい香りがする。

別に待ち合わせをしているわけでもないのになんとなく一緒に学校へ向かうのはいつものこと。


「今日、小テストがあるんです」

「そう」

「歴史なので、自信はあります」

「あぁ、煉獄先生の。確かに、うちの学校で歴史が苦手な生徒はほとんどいないね」


通学中の話題を提供するのはほとんどが後輩である彼の役目。こちらはそれに返事をして、時折会話に繋げるぐらい。

学年も違うし一緒にいるのなんて通学のときぐらいなのだから、話題がないのは仕方ない。それでも彼が一生懸命話題を作ってくれるため、今まで会話がなくなったことはない。


「苗字先輩のクラスは、一限目なんですか?」

「んー、うちのクラスは体育だよ。朝から冨岡先生はキツイなぁ」

あのスパルタ過ぎてPTAから苦情が来まくっていると噂の冨岡先生。あの人の授業は悪い方の意味で緊張感がある。たぶんそんなに悪い先生ではないと思うんだけれど、朝からは関わりたくないなぁ。


「そうなんですか・・・あ、じゃあ窓から苗字先輩が見えるかもしれないですね!」

「たぶんね」

僕の返事を聞いて何故だか嬉しそうにする後輩が「あっ、そうだ」と鞄から『竈門ベーカリー』と印字された紙袋を取り出した。


「これ、来月あたりから出そうと思ってるんですけど、よかったら試食してみてください」

「いいの?ありがとう、嬉しい・・・」

差し出された紙袋を受け取ると、中からじんわりいい香りが溢れて出ていて、思わず口角が上がってしまった。

それを見た後輩が僕より嬉しそうに笑って「感想聞かせてくださいね!」なんていうが、このいい香りからして感想は『美味しい』一択だろう。

賤しいと思いつつも紙袋を開いて中身を覗き込む。綺麗な焼き色と紫芋らしき色がついた丸いパンと、クッキーシューみたいな見た目をした、間にクリームとたっぷりのリンゴの角切りが挟んであるパン。

どれも美味しそうで、本当なら今すぐにでも食べたい。


「ふふっ、流石に今食べたら早弁過ぎると思いますよ」

「・・・そうだね」

どうやら今すぐにでも食べたいのがバレバレだったらしい。

紙袋を閉じ自分の鞄へ潰さないように慎重に片付けたあたりで、僕らが通っている学校が見えてきた。


「それじゃあ苗字先輩、また」

「うん」

また、とは言うが学年が違えばクラスのある階も違うし、下校するタイムングだって違うため、次にあうのは翌日の登校時間だろう。

後輩と別れて自分のクラスに向かう。

朝から体育は億劫だったけど、お昼になればパンが食べれるんだと思うと少しだけやる気が出た。




好きな香りがする後輩




「お、美味そうなの食っているな」

「あげないよ、狛治」

まだ食べていないと紫芋パンを隠しながら言えば「誰も寄越せなんていってないだろう」と呆れたような声が返ってくる。

弁当箱を僕の机に置き、前の席の椅子を引きずってきた狛治。いつもなら彼女と一緒に食べてるけど、今日は彼女が委員会の用事でいないらしい。


「相変わらず竈門に好かれているな」

「そうかな。朝なんとなく一緒に登校してる程度の関わりだと思うけど」

「高頻度で餌付けされておいてよく言う」

狛治は笑いながら弁当箱を開いた。中身は・・・うん、可愛らしいの一言に尽きる。彼女のお手製だろう。

愛されてるね、なんて言えば狛治は無言で真っ赤になった。



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