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※主人公がただのクズトレーナー注意。


名前は性格の悪いトレーナーだ。

バトルの結果に不服があれば相手のトレーナーを罵倒するし、負けた自分のポケモンも罵倒する。

何で負けてんだよふざけんなよカス!などとポケモンを怒鳴り睨みつける。そうすれば彼のポケモンは申し訳なさそうにか細い声で鳴くのだ。

それを見て、そのポケモンたちが憐れだと可哀相だと思ったトレーナーは数知れず。もちろん彼に直接物申すトレーナーもいたが、彼は聞く耳を持たなかった。


「あー!今日は快勝だったな!なぁ、リザードン!」

「グオォォオ!」

「見ただろ、相手の悔しそうな顔!最高だったよな!バトル前は『お前みたいなクズには負けない!』とか言ってた癖にさぁ、負けたら何も言わねーでやんの!俺をクズとか言いやがる君はどうしようもない雑魚でした!はいざんねん!」

ぎゃははははっ!と品の無い笑い声を上げる自らのトレーナーを背に載せ、リザードンは空を飛ぶ。

リザードンはヒトカゲだった頃から名前の傍にいる、仲間の中じゃ一番の古参だ。古参故に、一番被害を被っているであろうポケモンもリザードンだ。

「あーいう自分は正しいこと言ってます!って感じのヤツのプライドずったずたにするの最高に気持ち良い!快感!はぁ、俺今日は興奮で眠れねーかも」

ちらりとリザードンが名前を見れば、名前は「前見て飛べよグズ」とリザードンの首を叩いた。

そのまま前を向いたリザードンは目的地が見えてくるとゆっくりと下降し始める。今日の宿があるライモンシティだ。

名前は上機嫌のまま今日のバトル相手から徴収したお金で宿へと向かう。

少し前まで明るかったのに気付けばすっかり日は落ち始めており、名前は「眠い腹減ったクソが」と先程までの上機嫌さが嘘のように苛立ったような声を出した。

昔から感情の起伏が激しく、つい先程笑っていたかと思えば次の瞬間には怒鳴り散らす、名前はそんな子。そう言う時に彼の手持ちは彼を出来るだけ刺激しないように静かにしている。


「っつーかさ、よくよく考えれば今日のバトルで気に入らねーことあったわ!おいブラッキー!手前、俺が避けろって指示した時避けるのちょっと遅かっただろーが!相手のグズポケモンが鈍足だったおかげで避けられたから良かったものの、手前マジでふざけんなよ蹴るぞ!あ、リザードン手前もだかんな!」

部屋に着くまでの廊下にも拘らず大声で自らのポケモンを罵倒しはじめる彼に怪訝そうな目を向ける複数の人間。

名前はそれを全く気にすることなく受付で受け取った鍵に書かれた番号の部屋の扉を開き中へと入った。

名前に怒鳴られ俯いているリザードンを無視して名前は「おい手前等聞いてんのかよ!」と他のポケモンたちが入ったボールを叩く。

もちろんボールの中に入っているから返事が出来る訳も無く、名前は舌打ちをしながらボールを投げた。
すると彼の手持ちのポケモンたちが姿を現す。揃いも揃って俯いてしまっている。


「ったくよー、手前等俺の顔に泥塗るつもり?次馬鹿で間抜けなバトルしやがったらバトル中でも容赦なく蹴ってやるかんな!わかったかよグズ共!」

ポケモンたちがそれぞれか細い返事をすれば名前は満足したのか「もー疲れた!寝る!」とベッドに飛び込んだ。

しかし名前はベッドに飛び込んでも目をつぶることはなく、代わりにじとっとした目でその場で落ち込んでいるポケモンたちを見た。


「あ?何やってんだよ手前等、さっさとこっちこいよ、さみぃだろうがよクソが」

ベッドに寝転がったままちょいちょいと手招きしてくる名前の胸の中に一番に飛び込んだのはブラッキーで、それに続いて次々とポケモンたちは彼を囲うようにベッドへと飛び込んだ。

その中に身体の大きなリザードンまで加わればもちろんベッドはミシミシと悲痛な叫びを上げるのだが、名前はそんなこと全く気にしていない。

ポケモンたちがベッドに来ると、彼の目がとろりと眠そうに細くなる。

あるポケモンがそんな彼の頬にすり寄れば「んー」と唸りながらも拒否することなく大人しく彼は受け止める。つい先程までの彼とは大違いだ。


これはポケモンたちしか知らないことだが、彼は普段あれだけ酷い罵倒をしてくる癖に、寝るときはポケモンが傍にいないと寝れない。

手持ちが増えれば増えるだけ、彼はそのポケモンが一つでも足りないと眠れない。手持ちの誰かがポケモンセンターに行ってしまえば、彼の目の下はくっきりと隈が出来てしまう程。

「うー、もっとくっつけよクソが」

だから彼は、普段彼等をどれだけ罵倒しようとも、決して「捨ててやる」とだけは言わない。何が何でも傍に置き続けるつもりでいる。

正直彼より良いトレーナーは星の数ほどいるし、ポケモンたちが思うに彼より嫌なトレーナーは未だ会ったことはない。

でもだからと言って、彼等は彼を見捨てようだなんて思えない。既に目を閉じて寝息を立て始めたトレーナーは、案外自分達がいなければ何も出来ない愚かで可哀相で、それでいて可愛い子なのだ。


「・・・うぅ」

暖を求めるように名前はポケモンたちにすり寄る。それをポケモンたちは嬉しそうに見た。




クズは一人で眠れない




これだから彼等はこのどうしようもないクズトレーナーを嫌いになれないのだ。




お相手:無記名
シチュエーション:屑トレーナーと手持ちが案外ほのぼの過ごしてるって話

手持ちのポケモンが、DV彼氏と別れられない彼女のようになってしまいました。


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