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探偵社内に見た事の無い人がいた。

無表情でソファに座る黒コートを身に纏った男の人。

依頼人だろうか、と思う僕の隣を「やぁ!」と太宰さんがすり抜ける。


「久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「・・・息災だ」

どうやら太宰さんの知り合いだったらしい。

太宰さんはその人の正面に腰かけ「そう、それは良かった」と笑う。


「今日はどうしたんだい?」

「近くを通りかかった」

「そっか。暇があれば何時でも寄ってほしいと言ったのは私だし、来てくれて嬉しいよ」

親しい中なのだろうか。太宰さんの笑顔が何時にも増して深い気がする。

一方相手は無表情は変わらず、太宰さんの言葉に「そうか」とだけ返事をした。温度差が大きいな・・・


「・・・太宰、この間立ち寄った定食屋の梁が非常に丈夫そうだった。次回の自殺をしようするなら、店主に許可を取っておこう」

「え、本当?じゃぁお願いしとくよ」

「心得た」

何だか物騒な会話が繰り広げられているけれど、一体この人は誰だろう・・・

気になってしかたない僕は太宰さんに「あの・・・誰なんです?」とこっそり尋ねる。


「彼は名前くん。フリーの情報屋で、いろんなことを知ってるよ。よく自殺に良いスポットとかも教えてくれるんだ」

「へ、へぇ」

情報屋という響きは凄いけど、教えてる情報が自殺のスポットって・・・何だかちょっと胡散臭いなぁ。

「お!名前くんを疑ってるね?」

「べ、別にそういう訳じゃ・・・」

僕の考えにあっさり気付いた太宰さんの台詞に慌てて否定しようとするも、名前さんが真っ直ぐ僕を見ているのに気付き声を窄めた。

笑顔の太宰さんと違ってほぼ無表情の名前さんは、威圧感があって少し怖い。

「名前くん、軽く情報を披露してあげてよ」

後で報酬払うからさ、と名前さんの肩を叩いた太宰さんに、名前さんはふぅっと小さく息を吐いてから口を開いた。


「・・・お前の名は中島敦。5月5日誕生。現在年齢18歳。身長170p。体重55s。血液型AB型。孤児院を追い出された後、太宰と出会い自身の能力『月下獣』を自覚。区の災害指定猛獣だったが、太宰の推薦で探偵社の一員となる。現在70億の懸賞金を掛けられており、マフィアが血眼になって負っている」

「す、凄い、全部当たって――」

「なお・・・今朝、寮の朝食の焼き魚の骨が喉に刺さりのたうち回っている時に太宰からの電話があり、痛みと苛立ちのあまりその電話を無視。太宰には『ちょっとトイレに行ってて気づかなかったです』と虚偽の証言。ちなみに、喉に刺さった骨はつい先ほど自然に取れた」

「わぁ・・・酷いなぁ、敦君」

「えぇっ!?な、何で知って・・・と、というか、見てたんですか!?」

驚く僕に名前さんは「・・・のたうち回る時、茶を零して寮母に怒られていた」と追加する。恥ずかし過ぎる。

というか質問に答えてくれない。


「彼の能力だよ。千里眼って言うのかな・・・彼は自分がその場に居なくたって、その場で起こったことを全て知ることが出来る」

見かねた太宰さんの説明に「す、凄い・・・」と目を瞬かせる。

「本当なら探偵社に欲しいんだけどね。彼、良い返事をくれないんだ」

「・・・情報屋は中立の立場であらねばならない」

「探偵社に足を運んでくれるようになったのもつい最近なんだよね」

仲良さ気に名前さんの肩に腕を回した太宰さん。

名前さんの方は特に反応も無くただ受け入れていた。


「中島敦」

「は、はい」

「欲しい情報があるなら、俺に聞けば良い。報酬によっては何でも教えてやろう」

「彼の報酬は必ずしも金であるわけじゃない。彼は相手によって報酬を変えるんだ。情報の重要度が高ければ高い程、相手にとって大事なものを要求する」

「そ、そうなんですか・・・」

太宰さんの説明にごくっと息を飲む。そういえば、太宰さんはさっき僕の情報を言って貰うという依頼をしていた。太宰さんには一体何を要求するんだろう・・・


「太宰、報酬を」

「もちろんだよ。今日は何処の定食屋に行く?」

え?定食屋?

「・・・豚カツ」

「じゃぁ豚カツ定食食べに行こうか。あ、敦君も来る?」

「えっ、えぇ?報酬って、食事奢ること、ですか?」

相手によって報酬を変えるって言ってたけど、僕の個人情報が豚カツ定食って・・・

何だか少し落ち込みながらも「僕も行きます」と声を上げた。




定食程度の情報




「あ!そういえば名前くん、この間君が教えてくれたドラム缶を使った自殺法、苦しいばかりでなかなか死ねなかったよ」

「・・・そういう自殺法があると言っただけだ。実行しろとは言ってない」

「そうだけど、何だか面白そうだったし・・・」

「ならば他にも調べておこう」

あのドラム缶自殺、情報源は名前さんだったのか・・・

何だか不思議な人だな、と僕は豚カツ定食を頬張る名前さんと太宰さんのやりとりを見つめていた。



お相手:太宰
シチュエーション:中立の情報屋×太宰

特にシチュエーションの指定がなかったので、何となく中島くんも出しました。
文豪夢が初めてだったので口調とかまだあやふやですが、どうか多めに見てください・・・


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