たぶんだけど、本気で料理の勉強している人の前で言っちゃいけない言葉ってあると思う。
その一つを俺は発見した。
「あーっ、生クリームプレイしたーい」
「・・・死ね」
ほらね。タクミが夏場の腐りきった生ごみを見るような目で俺のこと見てるもん。
酷くない?俺一応年上ぞ?日本の生活で不慣れだった君と君の弟に何かと力を貸してあげたのは俺ぞ?ん?よく考えたら、料理のお裾分けとか貰いまくってる俺の方がお世話になってる感じ?・・・でも年上ぞ!!!
「チョコレートプレイも可・・・ごふっ!?」
わーお、無言で脇腹殴ってきたよこの子。綺麗な顔して物騒な。
「黙って手伝えないんですか?」
「いやー、手伝うって言ってもねぇ。お料理学校に通ってるタクミ坊ちゃんからすれば、俺の手伝いとかむしろ邪魔じゃね?的な?」
とか何とか言いつつ、タクミから渡された卵をカショカショと割ったり野菜の皮をむいたりする。
料理経験はほぼゼロだけど、手先は割と器用な方だ。それでも真面目に料理の勉強をしているタクミからすれば、子供のおままごとレベルの手際だろう。俺、マジで手伝う必要なくない?
「そもそも、なんで突然そんな下品な発想が出来るんですか」
「お?聞きたい?名前くんの男子中学生並みの脳内が気になっちゃう?」
冗談だからそんな険しい顔しないでよ。美人が怒ると怖いって言うけどホントだな。
「ほらタクミ、卵」
「有難う御座います」
「どーいたしました。あ、もう俺の手伝えることないよな?もう帰っていい?」
帰るっていっても隣だけど。そう言うとタクミから「いちいち帰るぐらいならリビングで待ってたらどうですか」という返事が返ってくる。
別にそれでもいいんだけど、此処には酒とかないしなぁ。あっても料理用のお酒だし。
酒を取りに家に帰るなら、もうそのまま家でゆっくりしたい。
もっと言うなら、さっきちょっとエロいこと考えちゃったし、部屋で軽く抜いちゃおうかなとか考えている。
夜はタクミやイサミから夕食の誘いを受けたり、夕食後はリビングでゆっくりしていけとか言われたりで、なんだかんだで時間がない。タクミたちと一緒にいるのが嫌なわけではないけれど、名前くんはもうちょっと性に奔放になりたいのだよ!
「いやー、今日はもう帰るわー。なんかムラムラしてきたし」
タクミも男の子ならわかってね!と思いながら言うと、何故だかタクミの手が止まった。手どころか全身硬直状態。
「料理の途中だけど手ぇ止めちゃって大丈夫?」
「・・・っ」
「お?」
タクミがキッと俺を睨みつける顔は真っ赤だ。
え?何?もしかしてタクミってそんなに初心な感じなの?イサミとは普通にそういう話するよ?お兄ちゃんの方が性に疎いとか何それエロゲ?
エロゲといえば、タクミが女の子だったら俺の好みド真ん中なんだよなぁ。金髪に青い目に白い肌、顔は美人・・・あー、うん、やっぱ好みド真ん中だわ。女の子なら。
「何でっ、料理の手伝いでそんな気持ちになるんですかっ」
「え?あぁうん、最近ご無沙汰でさ」
「よりにもよって、僕の隣でそんな・・・」
「そんなこと言われましてもー、生理現象ですしー」
真っ赤な顔で、仕舞いには涙目になって震え出すタクミに、何やら俺が悪いことをしているような雰囲気・・・え?男としては普通じゃない?むしろ、何故同じ男のタクミにそんな反応されるのか不思議なんですけど。何で?タクミも勃起するでしょ?ボッキーニするでしょ?
というかホント料理大丈夫?
「手伝い終わったしさ、ちょーっと家のトイレで抜いてくるだけだから。あ、完成したら呼んで、食べにくるから」
「待っ・・・」
「ん?俺のオカズが知りたい?いやー、流石にそればっかりは教えられないなぁ。あ、別にアブノーマル系な趣味があるわけじゃないけどさ、自分の性癖知られるのは流石の俺でもちょっぴり恥ずかしいっつーの?いやー、タクミってば大胆」
「べっ!別に知りたいとは言ってないです!あぶっ、アブノーマル系な趣味はないとか言ってますけど、さっき、な、生クリーム・・・」
「生クリームプレイはアブノーマルじゃなくない?愛する人ごと美味しく生クリーム食べてるだけじゃん。愛じゃん。エロスじゃん。愛あるエロじゃん」
「ううぅっ」
ねぇ、なんか焦げてない?タクミくんやい、君の手元の鍋から凄い音してるけど?
「あー、さっさと抜こっと。この間レンタルした金髪美女モノまだ見れてなかったんだー、あー楽しみ」
「き、金髪・・・」
ぶわわっとただでさえ赤かったタクミの顔が更に赤く、ゆでだこ状態になる。
「あぁ、性癖は教えらんないけど、タイプなら教えてやろう青少年。俺のタイプは、金髪青目の美人だ。胸はなくてもいいけど、手足が綺麗だとドキドキする」
「青目・・・」
あんまりタクミと喋ってると、折角のムラムラが治まってくるな。さっさと家に帰って抜こう。
んじゃ!とタクミに背を向けてキッチンから出ていこうとしたところで、リビングの方からどすどすと走る音がした。
「兄ちゃん!なんか焦げ臭いけど大丈夫!?」
「イサミ?・・・あっ!」
リビングからキッチンに勢いよく飛び込んできたイサミの言葉に、タクミは漸く我に返ってコンロの火を止めた。
「駄目だよ兄ちゃん!調理中に動揺を誘われても何とか出来るように名前さんで特訓しようって言ったじゃん!」
「す、すまないイサミ。動揺が抑えきれなくて・・・」
「ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇ、お二人さん?なんかよくわかんないけど、俺って何かの特訓に使われてた感じ?実はお手伝いじゃなくて妨害役だった感じ?」
「名前さん、兄さんちょっと動揺しちゃってるから。後で料理出来たら呼ぶからね」
イサミにさっさとキッチンを追い出される。いや、別にいいんだけどね?けど、俺の言葉程度で動揺するとか、タクミ大変だな。
さーって、さっさと抜いてすっきりしようかな。
待ってろよー、金髪美人ちゃん。
デリカシーの無さは匠レベル
「もー!そこは軽く聞き流さないと。たぶん名前さんって特に何も考えずに喋ってる感じだし」
「金髪青目がタイプで、胸は別になくてもいいって・・・」
「平常心だよ!平常心!でも良かったね!」
「・・・うん」
ぽぽぽっと顔を赤くして頷くタクミに「じゃぁ、とりあえず焦げた鍋をどうにかしようか」とイサミはコンロへと向かった。
お相手:タクミ
シチュエーション:ギャグっぽい話で主人公が変態だとなおよし
今のところノンケだけど、そのうちタクミくん相手にきゅんっとして「え?俺ってソッチもいけんの?」ってなって欲しい。