×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






今人気の若手男性ヒーローといえば誰?と道行く若い女共に尋ねて回るニュースキャスター。女共は様々なヒーローの名前を出すが、その中でもダントツに多い名前がある。


ヒーロー名 名前


本名をそのままヒーロー名にしていたらしく、すぐに情報は舞い込んできた。

出身は士傑高校、同級の中でも頭一つ分抜きんでており、同級からだけでなく教師や後輩からの信頼も厚かったらしい。

ヒーローになると元々の整った顔立ちのせいかたちまち若い女共からの支持を集め、男共からの嫉妬を集めた。もちろん、一部の男共は憧れや尊敬を抱いて女共と同じようにきゃーきゃー言っている。

今回の調査で見事『今人気の若手男性ヒーローNo.1』に選ばれた男は、シーンが移り変わると別のニュースキャスターからインタビューを受けていた。


若い女性から絶大な支持を受けているようですが?とてもありがたいことです。

逆に男性からの嫉妬も集めてしまっていますね。万人から愛されるヒーローへの道のりはまだ長そうです。

好きな女性のタイプとか聞いてもいいですか?今はヒーロー活動が精一杯で、正直思いつかないですが・・・優しい人が好きです・・・月並みですかね?


インタビューに対して次々と答えていく名前。当たり障りのない、好感度を下げない答えばかりだ。

俺は画面を見つめたまま顔を歪める。

「どこそこ愛想振りまきやがって」

これだけ聞けば、名前のアンチのようだが、別にそういうつもりはない。

女共が言う名前の良いところには共感できる。名前と結婚したいとかほざきやがった女はむかついたが、名前が害虫を引き寄せる花ならそういう嫌な輩が出てきてしまうのも仕方ない。

画面の中の名前はカメラに向かって笑みを浮かべ、軽く手を振って「応援よろしくお願いします」とまた愛想を振りまいた。

いらいらし過ぎて画面に五本の指全てで触れそうになったが、なんとか耐えた。


じっと画面の中の名前を見つめる。あいつ、少し疲れた顔をしてるな。他の奴らはわからないだろうが、俺にはわかる。

最近一気に人気が上がったせいで、バラエティ番組への出演回数も増えている。握手会やら地方公演まで行っているらしい。休む暇がないのだろう。

昔なら弄らなかった携帯でアイツのオフィシャルサイトやSNSでの呟きは毎日調べられる。疲れたなんて言葉は一度だって呟かれてはいないが、疲れない人間なんていやしない。

ヒーローの癖に忙しい理由が芸能人の真似事なんて、きっと元来真面目な名前なら受け入れがたいことだろう。それでも人々の理想を崩さないために常に愛想良くしている。

わかっちゃいるが、時折その愛想の良さが気に入らなくなる。憎らしくなる。

その笑顔は俺のためだけに浮かべるべきなのに。本当なら、俺の隣にいるべき男なのに。

画面の中で名前に馴れ馴れしく話しかける女性キャスターが気に入らない。名前の腹筋の話になり、どさくさに紛れて腹を触るその手は今すぐにでも崩してしまいたい。

名前、名前は俺のだ、そう決まってる。名前は俺の『王子様』なんだ。あの時から、それは決まっているんだから。

画面を睨みつけながら、過去の出来事に思いをはせる。



あの日、先生からの指示でとある人間を崩した後・・・その日は元々あまり体調がよくなかったせいか、それとも崩した人間が最後の抵抗で俺に殴りかかったせいか、俺は歩くことさえままならなくなっていた。

具合の悪さのせいか鼻血が出て、それを手で押さえながらなんとか路地裏へと身を隠した。

この状況下でヒーローに見つかるのは不味い。明らかに不審だから、きっと何者かを聞かれる。逃げる力もない俺にとって今の状況は最悪としかいいようがなかった。

そんな中、ある一人の男がやってきた。

覚束ない足取りで路地に入っていった俺を心配して付いてきたのか、当時は見知らなかった男が「具合が悪いんですか?」と路地に入ってきたのだ。

休日街に遊びにきてます、と言った風なラフな出で立ちの男。警戒しながらも立ち上がることが出来ない俺の目の前に、その男がやってくる。

男は俺の鼻を見ると「大変だ、鼻血が」と言って自身のポケットに触れた。


「痛くはありませんか?これ、良かったら使ってください」

ふわりと香った、おそらく柔軟剤の匂い。


男の俺に対して片膝をついて、そっとハンカチを差し出す男、名前は、昔見た薄汚れた絵本の中で唯一輝いていた王子様のようだった。

惨めな生活を一変させ、ハッピーエンドへとヒロインを導く王子。

悪意など一欠片も感じない名前からハンカチを受け取れば、名前は「良かった、受け取って貰えた」と笑った。

王子様が笑みを向けるのは、ヒロインであるお姫様だけ。じゃぁ目の前の王子様にとってのヒロインとは、自分のことなのだろうか。

受け取ったハンカチは沁み一つなく綺麗で、本人のと同じ匂いがした。

その後すぐに少し離れた場所から悲鳴が聞こえ、一瞬名前が気を取られた隙に近くまで迎えに来ていた黒霧が俺を隠れ家のバーへと転送させた。


しばらくしてテレビであの時の王子様を見つけ、王子様の名前が名前だと知った。

名前、俺の、俺だけの王子様。

今、あの時のハンカチを握りしめる。とっくにあの時の匂いは消えてしまったけれど、すんっとハンカチににおいを嗅げば何となく心が落ち着いた気がした。

このハンカチはガラスの靴に似ている。キャストが逆かもしれないけれど、何時か俺はこのハンカチの本来の持ち主である王子を迎えに行くんだ。

迎えに来た俺に、名前はどんな反応をするだろう。

ヴィランだと明かさなければ、案外俺のことを受け入れてくれるかもしれない。名前は真面目な上にお人よしだから、近づいてきた俺をそう簡単に拒絶は出来ないだろう。

あぁ、画面の中の名前がこっちを見てる。そろそろ番組が終わるのか、名前がこっちに手を振っている。

次はどの番組に出るのだろうか。敵連合としてやることが多すぎて、なかなか名前を迎えに行けない。

先生は俺が名前を手に入れること自体には反対していないのだから、今すぐにでも名前を此処に連れ帰って、ずっと一緒にいてくれるようにお願いしたい。

名前のための部屋も、黒霧に言えばすぐに用意してくれるだろう。


「・・・早く、迎えに行きてぇなぁ」

手を振る名前の顔に手を伸ばす。

画面にぴとりと手が触れた瞬間、画面が崩れた。

あっ、と小さく声を上げる。しまったな、触り立過ぎてつい五本指で触ってしまった。

本物の名前に触る時は崩してしまわないように、どれかの指に何かをまいておかないと。

そうだ、左手の薬指なんてどうだろう。何時か名前に指輪をはめて貰うために、此処は予約として取っておこう。


「名前、名前、好き」

名前、俺の王子様、いつか迎えに行くからその時は俺を受け入れて・・・




王子様を迎えに行きましょう




「名前、また届いているよ」

「・・・あぁ、有難う御座います」

少し薄汚れた箱に入ったソレを名前は笑顔で受け取った。

「今日のは一段と重かったですけど、中身は何なんですか?」

「大事なファンからのプレゼントだから、中身は秘密」

とある日を境に時折届くようになった謎の荷物。大きな箱から小さな箱まで様々で、今日はとても大きな箱だった。

事務所の事務員からその箱を受け取った名前は、その箱を自室に持ち帰りこっそりと開いた。


「・・・今日はぼろぼろのテレビか」

箱の中身は辛うじてテレビとわかる程度で後はぼろぼろにされたテレビ。つい先日はボロボロの携帯電話、その前は名前と今人気のアイドルがツーショットで映った雑誌がナイフのようなもので滅茶苦茶に切り裂かれた状態で送られてきた。

長い事続く謎の『贈り物』。普通なら誰かに相談するところだが、名前はいまだに誰にも相談していない。

ただの嫌がらせではないと、名前はわかっているのだ。

ぼろぼろのテレビが入った箱の中、その箱の奥底に、今日も一枚のメモ用紙が入っている。

歪なお世辞にも綺麗とは言えない字で『すき』とだけ書かれたその手紙。

「本当に、熱烈なファンだなぁ」

好きというからにはファンではあるのだろう。少々可笑しなプレゼントばかり送ってくるが、ファンなら大事にしよう。そう思うヒーロー 名前は、実はここ最近の芸能活動ですっかり疲れ切っていた。




お相手:死柄木弔
シチュエーション:世間で人気のヒーロー主がほしくてほしくてたまらない病み乙女チックな死柄木弔目線の話をキボンヌ。

疲労困憊になると人って正常な判断が出来なくなるよねって話。
たぶんヒーローなのに芸能活動で疲れ切ったヒーロー主は、ヴィランだと伏せた死柄木にあっさり近づかれ、あっさり誘拐される。


戻る