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愛する人には素直に愛を伝えなさい。幼い頃から、母は僕にそう教えてくれた。

愛する気持ちを隠すなんて勿体ない。溢れんばかりの愛は溢れさせるのではなくて相手に与えた方がずっと素敵なのだから。

自分で言った言葉の通り、母は愛を素直に伝える人だった。自らの愛する夫に愛を伝え、息子である僕にも愛を沢山伝えてくれた。

おかげで家族中は他の家族と比べても良好だろうと自負している。

愛は必ずしも相手に受け入れて貰えるものではないことは知っている。けれど、伝えずにいるよりは伝えた方がずっといい。



「スネイプ先生、先程の授業で質問が」

「・・・いいだろう」

授業が終わり誰もいなくなった地下の教室で薬棚の前に立っていた先生に声を掛ける。真っ直ぐと先生を見つめれば、先生は少し目を伏せた。


「質問箇所は何処かね」

「はい、この調合の三項目なんですが・・・」

羊皮紙を広げて質問箇所を指で差しながら内容を伝える。羊皮紙をじっと見下ろしている先生とは目が合わない。

大人の先生の方が僕より幾分か身長は高いけれど、僕の母も父も割と長身だから、あと数年すれば僕はもうちょっと大きくなるだろう。足のサイズも同級生より大きいし、期待は出来る。

「この部分は、眠り薬の調合で使用したこの方法が参考になる。きちんとメモは取っているかね?」

「はい、先生の言葉は、全て、しっかり」

笑顔で言えば、先生は少し黙って「・・・まぁいい」と首を振った。やっぱり先生と目は合わない。


「質問は以上かね?」

「はい。あと、今日もお伝えしたいことが」

先生の肩がぴくりと震えた。僕は笑顔で先生を見つめ、いつもの言葉を口にした。


「今日も先生のことを愛しています。どうか、全てを受け入れずとも僕の言葉に耳を傾けてください」

「ま、いにち、毎日、飽きないな、苗字」

「一日に一度だけなんて我が家では少なすぎるぐらいです」

本当なら朝初めて出会った瞬間に愛を、廊下で偶然出会えばまた愛を、夜眠る前に愛を、この溢れんばかりの愛を伝えたい。


初めて先生を見た時から好きになってしまった僕の愛は、年々増加の一途をたどっている。

先生はと言えば、何度愛を伝えてもまるで初めて愛を伝えたかのような反応をしてくれる。嫌なら拒否してもいいと言っても、先生は「聞くだけなら」と僕を受け入れてくれた。

毎日毎日、先生と二人きりになれる時間を見つけて、その日一日の愛を告げる。

不思議と毎日必ず先生と二人きりになれるタイミングがあるから、もしかすると先生がわざわざ僕との時間を作ってくれているのかもしれない。そうだったら嬉しい。


「いつか、僕が卒業するときになったら、告白をさせてください。今はまだ将来の見通しもなく、子供の僕だといろいろと不都合があるでしょう。でも何時か、僕は先生から愛してもらえる素晴らしい男になります。だからその時まで、僕の愛の言葉だけでも、聞いてください」

卒業間際になったら告白をする。それは自分の中で最初に定めたルール。

先生もお忙しい人だから、僕ばかりに構ってはいられない。けれど僕は先生を愛してしまっているから、もしお付き合いできるようになったらそれこそ四六時中先生に愛を伝えてしまうだろう。それじゃ先生の迷惑になってしまう。

僕の言葉に対する先生からの拒否の言葉は出てこない。


「先生、そろそろ目を合わせてはくれませんか?先生に僕を見て欲しいです」

ずっと目を逸らし続けている先生にそうお願いすれば、先生はしばらく視線を漂わせ、ちらりと僕の方を見てくれた。

その耳が真っ赤に染まっている様子はとても可愛らしい。

どれだけ年齢差があっても愛する人は当然可愛らしくて愛おしい。先生と目が合って、僕は喜びに思わず笑みを浮かべた。すると先生はまたパッと目をそらしてしまった。


「先生、先生、スネイプ先生、僕は先生を愛しています」

「・・・一日に一度だけではなかったのかね」

「先生と一瞬でも見つめ合うことが出来た喜びで、つい」

ごめんなさい、と笑えば先生は小さく息をついた。


「・・・質問が無いなら、そろそろ次の授業の準備でもしたまえ」

「はい。今日も有難う御座いました」

今日はこれでおしまい。まだ愛は溢れているけれど、明日まで我慢しなければならない。

ぺこりと頭を下げ、くるりと先生に背を向ける。

次の授業は箒だ。本当ならクディッチの選手になって先生に格好いいところを見せたいけれど、生憎僕は箒が苦手だ。飛ぶこと自体は出来るけれど、地上に戻るころにはどうしても酔ってしまうんだ。

あぁ次の授業嫌だな、と思いながら地下教室の扉に手を掛ければ、背後から「待ちたまえ」と声を掛けられた。珍しいなと思い振り返れば、くるりと杖を回した先生の方から何かが飛んでくる。

咄嗟に掴めば、そこにあるのは小さな飴玉一つ。


「次の授業は箒だったな。酔いやすい苗字は、これを常備しておくように」

静かにそう言った教授は、すぐに薬棚の方を向いてしまう。

「一つだけの飴を常備するのは難しいので・・・また、貰いに来てもいいですか?」

薬包紙で包まれた飴玉を大事に大事にポケットに仕舞いながら言えば、先生は何も言わなかった。拒否はされなかったから、きっと大丈夫だということだろう。

それにしても僕の次の授業が箒だと知っているなんて、偶然だろうか。偶然知ったとしてもわざわざ僕のために酔い覚ましの飴を用意してくれたのだ、そこにはきっと『気持ち』が籠っている。

嬉しくてたまらない僕は地下教室から出てすぐに、同じ寮の生徒に「上機嫌だけど何かいいことでもあった?」と聞かれてしまった。

「いいこと?勿論。とっても幸せなことがあったんだ。これなら次の授業も乗り越えられそうだよ」

僕が箒の授業が嫌いなことを知っているその生徒は「とっても素敵なことがあったんだね」と笑ってくれた。


そうして箒の授業をやり終え、ふらりとしたまま口に入れた飴玉。偶然だろうか、僕の好きなハチミツの味がした。




一日一度のラブコール




名前が出て行った地下教室、とっくの昔に整理が終わっていた薬棚の前に立っていたセブルスは、ずるずると床に座り込む。

毎日毎日凝りもせず、全く変わることのない愛を自分に伝えてくる生徒。

そんな毎日を続けて、もう五年。卒業間際に告白するということは、後二年もたたずうちに名前はセブルスにお付き合いを申し込むのだろう。


・・・まだ一年以上ある。けれどセブルスは、どうしても今のうちから緊張してしまうのだ。あの純粋で愛にあふれる生徒からの告白を、どのような言葉で受け入れればいいのか、と。

もちろん受け入れる前提であるのだから、名前の未来は明るい。




お相手:セブルス・スネイプ
シチュエーション:学生ならではの純粋な愛をストレートに伝えてくる主人公に、両想いで照れながらも応じてくれる教授が見たいです…

まだ付き合ってません、でも完全に両想いです(*‘∀‘)
言葉遊びとかそういうのナシな愛のダイレクトアタックに教授は常に照れていてくれればいいなと思います。


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