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※『お味噌汁が飲みたいの』続編。44撃目ネタ。


「ソニック君の髪は艶々でさらさらだね。何か特別なお手入れとかしてるの?」

「特にこれといったことはしていないが・・・」

「へぇ。じゃぁ素でこれなんだね」

するすると俺の髪に指を通しながら上機嫌に笑う名前は、この髪が好きなのかもしれない。

翌日から、特に意味はないが、本当に特に意味はないが、ヘアケア用品を薬局に見に行った。


だがまさかその数日後、サイタマの弟子を名乗るガキとの戦闘で髪をばっさり失うとは思わなかった。

あのガキには敗北こそしていないが、途中でサイタマの邪魔が入ったために決着はついていない。・・・いつか、報いを受けさせてやる。

短くなってしまった髪のまま名前に会いたくはなかったが、タイミングの悪いことに今日は名前の家で夕飯を作って待っている約束だった。

ざんばら髪をある程度整え名前の家で夕飯を作る。作り始めてからしばらくすると、玄関の扉が開き「ただいま」という声が聞こえた。

玄関から台所までの距離はほんの数メートル。


「ソニック君いらっしゃい。今日来てくれるって話だったから、お土産にケーキを買って・・・あれ?」

不思議そうな名前の声に身体が硬直する。しかし俺はさもその声に気付かないフリをして食材を刻み続ける。

名前が荷物を置いた音がする。ゆっくりこっちに近づいてくる足音。視線は頭部に感じている。


「わぁ、いい匂い。今日は肉じゃが?」

「・・・あぁ」

冷蔵庫にケーキの入った箱をしまい込み、隣に立った名前が鍋の中を覗き込んで嬉しそうな声を上げる。そのまま今日の夕飯にだけ興味を示せばいいのに、再び名前は俺の頭部へと視線を向けた。

「ねぇソニッ・・・」

「皿を出してくれ。そろそろ出来る」

「わかったよ。ねぇソニック君、その髪型だけど」

俺が触れてほしくないことには全く気付いていないらしい。言われた通り皿を出しながらも言葉を続ける名前に仕方なく「・・・なんだ」と返事をする。

見れば、名前は笑顔でこちらを見ていた。


「イメチェンしたんだ。短髪も似合ってるね」


「は・・・」

「ふふっ、ソニック君って髪だけじゃなくて頭の形も綺麗だから、撫でやすそうだなぁって。後で撫でさせてね」

唖然としている俺に「はい、お皿」と言って肉じゃが用の皿を差し出す名前の表情や声に嘘偽りは感じない。本気で俺の髪形を褒めている?

「・・・短くなったが、いいのか」

「え?・・・あっ!もしかして、意図しないイメチェンだった?ご、ごめんね。てっきり普通に美容院行ってきたのかと思って・・・」

ハッとして慌てだす名前は、やっぱり本気で俺の髪形を褒めていたらしい。

どうフォローしようかとおろおろしている名前に小さく息をつき「不慮の事故で短くなったから、自分で整えた」と説明をする。

サイタマの弟子との戦闘でこうなったことは別に言わなくてもいいだろう。名前は貧弱だから、俺が戦った話をすれば青い顔で「怪我はしてない?」と聞いてくるのが目に見えている。

「自分で整えたの?器用だねぇ。あ、だったら後で僕の前髪も切って貰おうかな。ちょっとだけ目にかかってて鬱陶しかったんだ」

自分の前髪を少し触って笑う名前に「あぁ」と返事をした。

何時の間にやら、あの重々しかった胸のもやもやがなくなっていた。


「名前は長い髪が好きなのかと思っていた」

「もしかして、僕の好みを気にしてくれてたの?」

「・・・お前が残念がると思っただけだ」

俺の返答がさぞお気に召したのか、笑顔の名前の手が俺の頭に触れた。

「ふふっ、思った通り撫でやすいなぁ」

「お、おい」

両手で皿を持っているせいで俺が身動きを取れないことをいいことに、名前の手がくしゃくしゃと俺の頭を撫で続ける。

何が楽しいのか満面の笑みを浮かべて上機嫌に鼻歌なんてものまで歌い始めた名前に、俺がやっとの思いで絞り出せたのは「・・・飯が冷める」という程度の言葉だった。

名前は「ごめんね」と笑いながら手を離し、食器棚から取り出した二人分の茶碗に白米を盛り始めた。

どくどくと騒がしい胸を何とか無視して俺も更に肉じゃがをよそい、リビングへと持っていく。名前とすれ違う時にまた軽く頭を撫でられ、うっかり皿を落としそうになった。


「前の髪型も好きだけど、折角綺麗に結ってる髪を崩すのも悪いなぁって思ってたんだ」

「・・・髪ぐらい、すぐに結いなおせる」

「それでもちょっと気にしちゃうし、その髪型だと沢山撫でられるから、僕はその髪型も好きだなぁ」

本人の言う通り、食事中も名前のおかわりのご飯をついでやれば「有難う」と頭を撫でられ、食後のデザートにケーキを食べている最中も「美味しい?」と頭を撫でられ、ソファで二人並んでテレビを見ているときも無言のまま頭を撫でられ・・・


「全く鬱陶しいやつだな!」

「ごめんね、ソニック君。ソニック君の頭が撫でたくて仕方ないんだ」

「ふ、ふんっ!減るものでもないしな、仕方ないから許してやる」

「うんうん。有難うソニック君」

元気になって良かった、と呟く名前を無視して俺は大人しく名前に頭を撫で続けられた。

何が楽しいのか俺にはまったく理解できないが、撫でたいというなら仕方ない。

別に顔は緩んでいない。嬉しさのあまり名前の手に擦り寄ったりもしていない。


「今日も泊っていく?」

「・・・と、まる」

「そろそろソニック君の荷物をこっちに移動させてもいいんだからね?」

「そ!?そそっ、それは・・・」

ぎぎぎっと硬くなった身体で名前を見れば、名前はとろりと甘く笑っていた。




その頭を撫でたいの




「に、荷物・・・明日移す、ぞ」

「うん。荷物は好きな場所においてね。今度、一緒に家具を見に行こうか」

「・・・行く」

ぽすっと名前の胸に頭を寄せれば、また頭を撫でられた。




お相手:ソニック
シチュエーション:「お味噌汁が飲みたいの」で、ソニックの髪がジェノスとの戦いで髪が短くなった。ソニックは男主に髪の事を褒めて貰ったことがあり綺麗にしていた。その後、落ち込みながらも男主に嫌われたくないと思っていたときに男主に「短い髪も似合ってる」と言われて照れて嬉しかった話。

ソニックの頭の形はきっと綺麗なんだろうなぁ、撫でたら絶対きもちいよなぁ・・・という欲望が混ざった一作でした。
通い妻から同棲、からの事実婚へ進化しました。


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