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高木渉は性格が良い。それは周知の事実だと思う。

人当たりが良いし、まず人を疑わない。性善説を完全に信じてるんだろうなぁって感じの頭がお花畑な感じがする。いや、別に貶しているわけじゃない。褒めているつもりなのだ。誉め言葉がへたくそ過ぎて侮辱に聞こえるかもしれないが、俺は同僚の高木を褒めているのだ。

多分高木は、頭の中に妖精さんがいる。あ、別に侮辱しているわけじゃない。絶対。

人に悪意を向けられたって、持ち前の人の好さで相手を絆す。あれだけ露骨にツンツンしていた白鳥さんさえ高木の前ではツンツンし切れていなかった。高木、恐ろしい子。

そんなゆるゆるふわふわの高木だが、面倒見だっていい。人が好くて面倒見がよくて頭の中がお花畑だと、当然子供にだって好かれる。まぁ好かれ過ぎて若干舐められている感は否めないが、本人が気にしていないならそれでいいのだろう。


「高木、これうめぇな」

「あっ、苗字、僕の頼んだ分ばっかり食べないで、自分の分を食べなよ」

「隣の芝生は青く見える、隣で食ってる奴の飯が上手そうに見える、これって自然なことじゃないか?」

「まぁ、人が食べてるものが美味しそうに見えるのはわかるけど・・・」

高木が頼んだふわとろオムレツとその横に添えられたハンバーグをちょいちょいつまむ。

既に俺が三分の一食べたあたりで漸く指摘するのか、高木。ちょっと抜けているぞ、高木。弱肉強食の世界じゃ絶対生き残れないな、高木。

頭の中で高木高木言いつつ「じゃぁ俺のナポリタンも食えよ」と差し出せば「有難う」と高木は笑った。いや、お礼を言うのは可笑しいだろ。まず食われたことに怒れ。


「高木ってさー、優しいよなぁ」

「え?何、突然」

「高木が優しすぎて俺は心配だ。警察の癖に何時か詐欺の被害に遭うんじゃないかって心配過ぎて夜しか眠れない」

「あれ?この間見回り中のパトカーの中で昼寝してなかった?」

あ、ツッコミ入れるのそこなんだ。


「なぁ高木、俺はお前のこと、すっげぇ優しくてすっげぇ親切ですっげぇ良い奴だと思ってる。でも同時に、滅茶苦茶心配だ。主に自己防衛が手薄そうって意味で」

「えっ、と、突然何を言い出すんだ・・・有難う」

照れているのかほんのり頬を赤くして顔を緩ませる高木。男の癖にこういう表情をしても許されるのは高木かこの喫茶店の店員の金髪美人♂ぐらいなものだろう。にしてもこの喫茶店の金髪店員、たまに俺と高木の様子を確認しているような雰囲気でもあるが、警察関係者が店に来るのが珍しいのだろうか?高木は金髪店員と顔見知りみたいな雰囲気があったし、警察が珍しいわけではなさそうだが。


「苗字はそうやって人のことを素直に褒められる、心根の真っ直ぐした人だなって思うよ。僕、君のそういうところを尊敬してる」

「おーっと、突然の攻撃に俺の心臓が痛いんだけど、何これ新手の精神攻撃?お前は俺を攻略したいの?されるよ?俺、案外簡単に攻略されるちょろ系ヒロインになるよ???」

「よくわからないけど、苗字はヒロインよりヒーローじゃないかな。この間の犯人取り押さえたところ、かっこよかったよ!」

「うううっ・・・た、高木、恐ろしい子」

この間?あぁ、高木と一緒に行ったコンビニで遭遇したコンビニ強盗か。休憩中とはいえ警察がいるコンビニに強盗しかけてしまうなんてと、ほんの少し同情してしまったのは内緒だ。


俺は目暮班じゃないから普段高木とは別の場所で捜査をしているが、現場が近ければ連絡を取り合って一緒に昼休憩を取ったりするし、飲みにだって行く。

今日はこの近くで事件があったらしく、あの眠りの小五郎の手助けもあり早期に事件が解決したから一緒に昼休憩でもしないかと高木に誘われ、のこのこやってきた俺は実のところ同期の高木を相当気に入っているのだろう。まぁとっくに自覚はしていたため、今更な感じもあるが。

「不味いな。このまま高木のペースにのせられると、俺は本当にチョロ系ヒロインになってしまう。俺、なるんだったらイケメン主人公になりたい」

「心配しなくても苗字は人気だよ。この間、交通課の女性たちに苗字のこと聞かれたし」

「マジか」

「マジだよ」

俺の口調に合わせて返事をした高木が「ナポリタンも美味しいね」と笑う。俺もお前のオムレツ美味しい。あ、ついに半分以上食べてしまった、そろそろ高木は怒っていいぞ。


「って!あぁ、もぉ、殆ど苗字が食べちゃってる」

「すまんすまん。食べ盛りで」

「しかたないなぁ・・・」

「こらこらそこで許すんじゃない。たまには心を鬼にしてみろよ高木。正直知り合ってから今まで、高木が俺に怒るところ見たことが無い」

「えぇ?だって、そこまで本気で怒るようなことされたことないし。小さな悪戯ぐらいならよくあるけど」

「お前の沸点高すぎて本当に心配」

知ってるか高木、本来食べ物の恨みって恐ろしいんだぞ。お前のように「しかたないなぁ」で済ませられる案件じゃないんだぞ。まぁ、これは人それぞれの匙加減だと思うが。それでも高木は寛容すぎる。


「やっぱり俺はお前が心配だ・・・詐欺に遭うどころか詐欺に遭っても気づかないまま終わる可能性が怖い。何かあったらすぐ俺に言うんだぞ、同僚が詐欺事件の被害者になったら流石の俺も泣く」

「昔から心配性だなぁ、苗字は」

お前と関わった人間は皆お前を心配してると思うんだが、俺の考えすぎだろうか。

「心配過ぎて食べ物が喉を通らなくなりそうだ。あ、すみませーん、ハムサンド一皿追加で」

カウンター越しに金髪店員に言えば「はーい」と明るい返事が返ってきた。


「そういえば高木、目暮班の検挙率が高いのは知ってるけど、おかげで満足な休みも取れてないんじゃないか?」

「うん?まぁ、確かに前と比べて随分忙しくなったね」

「昔から物騒だった米花がもっと物騒になったな、何かの呪いかなってぐらい」

「ははっ、苗字ってそういうオカルトチックなこと信じるタイプだっけ?」

くすくす笑う高木に「まぁそこそこ」と返し、金髪店員が持ってきてくれたハムサンドを一つ掴んでから皿を高木の方へと寄せる。

くれるの?と首をかしげる高木に「オムレツのお詫び」と言えば嬉しそうに笑われた。


「休みが合うたびにお前と遊びに出かけてるけど、よくよく考えれば高木が休めてないんじゃないかって思ってさ。疲れがたまってふらふらになったら、ただでさえ低い高木の自己防衛力がもはやノーガードレベルになるんじゃないかって・・・」

「えっ、僕結構苗字と過ごす時間で結構休んでるつもりだけど」

「っつっても、一緒に歩き回ったりしてたら身体の疲れも取れないだろ。俺のことは気にせず、たまには家でのんびり過ごすのもいいんじゃないか?」

俺の言葉に高木がへにょっと眉を下げる。

「苗字は僕といると休めない?」

「正直お前と喋ってるとこの世の汚い物事を忘れられる。これが高木セラピーか」

「じゃぁ僕も苗字セラピーを受けてるよ。だから、そんな寂しいこと言わないで」

じっと俺を見つめる高木に、俺は「んんっ」と唸ってそっぽを向いた。


「・・・お前、俺のこと大好きだな」

「えっ!?な、何で突然そういう話になるんだ!?」

吃驚したように声を上げ手の中のハムサンドが歪むほど強く握った高木は、図星を突かれたかのように真っ赤になっていた。


「え?何?お前、ほんとに俺のこと好きなの?」

「な、えっ、そ、それは・・・」

「いや、隠すのへたくそか。可愛い奴め」

俺は高木の頭を少々乱暴にぐしゃぐしゃと撫でた。

わっ!と声を上げて慌てる高木は気付いていないだろうが、俺の顔も割と赤くなっていた。そのまま気付かないでいてくれるとありがたい。




昼は喫茶店で済ませよう




あと、それをこっそり観察している金髪店員と、いつの間にか増えていた眼鏡少年、頼むから余計なことは言わないでくれよ。




お相手:高木刑事
シチュエーション:ほのぼの夢(ギャグテイストだと嬉しいです)で、男主ポジは出来れば同僚がいいです。内容は男主が高木刑事をイジる?(からかう?)って高木刑事が照れる感じの……がいいです(分かりづらくてすみません)

同僚主×高木、あむぴと名探偵を添えて
このままゆるゆると愛をはぐくんでいけばいいのではと思います(*´з`)


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