×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






初めて出会った時から、僕は彼を『美味しそう』だと思った。それは認めよう。

だが彼は半分とはいえ僕と同じ喰種で、同族喰らいの趣味の無い僕にとっては興味の無い存在であるはずだった。そのはずだったのだ。

にも関わらず、周囲はいろんな勘違いをしてくれた。


自分で言うのも何だが、僕は他人から好かれる。両親から貰い受けた容姿もだが、頭も悪くなくて話術もある。好かれる要因は沢山あったが、その時ばかりはそれが非常に疎ましかったのを覚えている。

簡単に言ってしまえば、僕を好いた周囲が勘違いを起こしてカネキ君を襲った。

僕はただ普通にカネキ君をレストランに招待しただけなのに、彼を正装に着替えさせてとスタッフにお願いしたらなんかカネキ君がメインディッシュ扱いされてた。吃驚だよ。

意味も分からず見守ってたらカネキ君普通に飼い人に勝っちゃうし、何か血を流すカネキ君物凄く良い匂いするし、観客も嗅いじゃって大興奮してるし・・・

僕は何も頼んじゃいない。カネキ君を食べるつもりなんて微塵もなかったんだ。それでも周囲は「流石はMM!素晴らしい食材を見つけてきましたな!」と褒めたたえるし・・・


まぁいろいろあった結果、僕は謂れの無い罪でカネキ君達にフルボッコにされた。

まぁさ、カネキ君の知り合い喰種のガールフレンドを僕の信者が攫ってきた時は度肝を抜かれたよ。あ、これ完全に僕終わったな・・・ってね。

カネキ君達はまぁ被害者だし、勘違いとはいえ僕の信者がやらかしたことだから僕が責任を取るのが筋というもので、僕は半無抵抗でやられた。まさか自分の肉を食べなきゃ死んじゃうぐらいの重傷を負わされるとは思ってなかった。

僕は重症。カネキ君達とはもう会わない。そのつもりだったんだ・・・なのに、なのに・・・



「・・・僕、何してるんだろ」

僕は今、アオリギの樹という組織に所属している。

何故こうなったのだろう。傷が完治した後、あんていくとは別にある行きつけのお店で珈琲を啜っていた僕をひっ捕まえたのは、満面の笑みを浮かべたカネキ君だった。

今僕は、アオリギの樹のアジトで読書をしている。何かしてないと落ち着かないのだ。

「ぅっ・・・」

が、突然膝の上に重みを感じたかと思えば、読んでいた本を取り上げられる。


「ねぇ、名前さん」

「・・・何だい、カネキ君」

目の前にいたのかカネキ君で、僕は内心冷や汗をだらだら流しながら小さく笑みを浮かべた。

僕の膝に跨る様に座り、取り上げた本を床に落としたカネキ君。

あの日僕を捕まえて引っ張って行ったと思えば「資金源になってください」と言って来た彼の笑顔は忘れられない。トラウマレベルだ。

別にお金ぐらいならいくらでも出せる。けど、何故僕は常にカネキ君の傍にいることが定められているのだろうか。今じゃカネキ君の右腕扱い・・・と思いきや、まさかの恋人扱いである。この間なんか、バンジョイ君から「式は何時するんだ?」的なことを聞かれてしまった。何故だ、辛い。

あの頃よりもずっとずっと強くなった彼とは正直やり合いたくない。確実に大怪我をするのは僕だ。


「僕のこと、美味しそうって思います?」

「・・・あー、まぁそうだね」

至近距離に来ると更にその芳香を感じる。

カネキ君は可笑しな子だ。彼は僕が美味しそうだと言えば、酷く満足そうに笑う。

今だってそうだ。僕の短い返事に「ふふっ」と笑いながら僕の首に腕を回してくる。


「味見してみます?」

「・・・遠慮しておくよ。君のか弱いガーディアン達が泣いてしまう」

例えば妹のように可愛いヒヨリや、彼を慕う弱い喰種達。彼は好かれる人間だ。いろんな人から、いろんな形で。

「そんなに遠慮しなくても」

首に回ったままの腕がこのまま僕の首を圧し折るんじゃないかとドキドキしながらも「今や僕と君は仲間なんだ。当然だろう」と余裕ぶって笑う。

するとカネキ君はヒヨリ達に向けるものとは違う底意地の悪いニヤニヤとした笑みを浮かべた。


「あの日は遠慮なんてしてなかったのに」

「だからあれは誤解なんだと何度も言ったじゃないか」

あぁ、また彼はそうやって人の傷をほじくり回して・・・

正直今すぐにでも家に帰って部屋に閉じこもりたいけれど、それが許されないのが今の僕だ。あの日の出来事に対する後ろめたさを弱みとして握られていると言っても過言ではない。

今この場にはいないヒヨリ達が早くこの場に帰って来てくれることを願う。

そういえば彼女達は何処へ?あぁ、確かヒヨリは姉のように慕っている霧嶋さんのところへ遊びに行っているんだっけ。バンジョイ君は他の仲間たちと一緒に特訓しに行った気がする。

・・・誰でも良いから、僕も連れて行ってくれれば良かったのに!


「名前さん」

「何だい、カネキ君」

「遠慮、しないで良いんですよ?」

にこりとカネキ君が笑う。僕も笑みを返す。

「遠慮なんてとんでもないさ。僕は、君と長くお友達でいたいからね」

だからどうか、もうそういうことを言うのは止めて頂きたい。後ろめたさで心臓が苦しくなるし居心地悪いし逃げたくなる。




食べませんったら!




「・・・名前さんになら、食べられたいのになぁ」

小さく小さく呟くカネキ君に、僕は笑顔で「冗談はよしたまえよ」と言った。

・・・冷や汗が止まらない。




お相手:カネキ
シチュエーション:成り代わりをよく書いている印象があるので、ぜひ東京喰種の月山成り代わり主を書いてもらいたいです
月山成り代わり主が大好き過ぎるカネキでお願いします

手癖で原作月山さんのかっこよさがログアウトしました。
ぐいぐいくるカネキくんにおろおろし続ける予定。


戻る