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04


ばしゃりと目の前に液体が零れる。それが故意に行われたことはよくわかっている。

内心の呆れや口から出そうになるため息を押し殺し、目の前でにやにや笑っているリードさんを見る。

「おいプラスチック野郎、さっさと掃除しろよ。お前はそれしか出来ねーんだからな」

「ギャビン・リードさん、高温の飲み物を零すのは危険です。跳ねて火傷をする恐れもあります」

そう言いながら床を拭こうとしゃがみ込めば、がつんと頭を殴られる。

初めて出会った時からリードさんは僕に対してというより、アンドロイドに対しての態度が悪い。初対面の時から今に至るまで、全く変わらないその粗悪な態度。今のようにわざと掃除場所を増やされたり暴力を振るわれたりすることも多々あり、あまりに酷い時は他の人間の職員が注意をするほどだ。


「お前といい、ジジイのところのといい、本当に生意気だな」

ジジイのところの、という単語で思い出す。そういえばつい最近デトロイト市警に配置されたアンドロイドはコナーというらしい。思った通り彼はアンダーソンさんの担当になったみたいだ。

「火傷はありませんか」

「まぁお前の方がマシか。あいつより、ずっと従順だからな」

床を拭く僕を見下ろし鼻で笑うリードさん。機嫌が大分良くなったらしい。

掃除場所を増やされることは特に問題じゃない。毎日掃除をしているからどこもかしこも綺麗だし、ふき取るのにかかる時間なんて微々たるものだ。殴られたりすることだって、痛覚もないアンドロイドには無意味だし、今のところは部品が損傷するような大きな打撃は与えられていないから僕としては軽いじゃれ合い程度に捉えている。

リードさんだって、なんだかんだ僕をそこまで過剰に嫌ってはいない。暇なときに暇つぶし程度に構ってくるぐらいで、僕の仕事の邪魔はしてこないし。


「リードさん、火傷は」

「ねーよ。流石はプラスチック、手前の頭はすっからかんだな」

「火傷が無いようで何よりです」

やっぱりリードさんは手のかかる大きな子供だな。ご両親も彼を育てるのに苦労したことだろう。

彼を嫌うことは簡単だが、ご両親の気苦労を考えると彼を嫌うのは可哀想だなと思うのだ。どうやら彼は異例の速さで同僚から嫌われてきているらしいから、なおのこと。


「おいエド、珈琲持ってこい」

「えぇ、わかりました」

あまり甘やかすのも良くないとは思うけれど、彼に優しくする人間がいないなら今は僕がその役目を担おう。あまりやり過ぎるようなら、偶然を装って報復しようかな。




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