×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



10


世間では変異体の事件が絶えないらしい。テレビや雑誌では変異体の特集が組まれているから、そういった情報がどんどん僕の中に入っていく。

最近ではジェリコという名のアンドロイド団体が放送局をジャックして声明を発表した。アンドロイドに人間と同等の権利を、我々は生きている、などなど・・・

前世で見たSF映画みたいな展開だなと他人事のようにニュースを楽しんでいた。

まさか変異体が集まって一つの組織になるなんて。今後の展開が気になる。

でもきっと、このままデモ行為が続けば人間側も黙ってないだろうな。現に元々強かったアンドロイドへの風当たりはもっと強くなっている。署内に足を運んだ一般市民が忌々しいものを見るような目でこちらを見ていたこともある。

自由を掲げるのはいいけれど、そのせいで関係のないアンドロイドまで被害を被るのはいかがなものだろうか。と、アンドロイド人生を謳歌している僕は思うわけである。


「エド、ごみの回収をお願いします」

不意にコナー捜査官の呼ぶ声が聞こえ、僕はアンダーソン警部補の席へと向かう。アンダーソン警部補の机の上にはドーナッツの空き箱やハンバーガーの包み紙が散乱していた。

「ったく、後で捨てるっつってんだろうが」

「これから捜査に出るんです。後でなんてありません」

そんな会話を聞きながらせっせとアンダーソン警部補の机の上のゴミを集めて手元のゴミ袋に入れる。アンダーソン警部補が「これも頼む」と中身のない空の紙コップを差し出してきたため、僕は笑顔を作り「わかりました」と返事をした。


「おいおい、アンドロイドがアンドロイドを使うなんて、笑えるじゃねーか」

ずかずかと足音を立てながら近づいてくるリードさん。おそらくコナー捜査官が僕を呼んだのを聞いていたのだろう。にやにやと笑い「アンドロイドにも上下関係があんのか?あ?」と僕やコナー捜査官を見る。

「僕は清掃用アンドロイドですから」

「そうだったな!お前はそこのプラスチックと違って誰の言うことでも聞く、従順なアンドロイドだったな」

ご機嫌に頭を撫でるような動きで僕の頭部をがくがくと揺らしてくるリードさん。何も言わず受け入れていると、コナー捜査官が「やめてください、彼の業務の妨害ですよ」と声を上げる。まさかコナー捜査官が口を出してくるとは思わなかった。

「あ?文句あんのかプラスチック野郎」

ぱっと僕の頭から手が離れたと思えばリードさんはコナー捜査官に詰め寄る。

アンダーソン捜査官が「おいやめろ」と声を上げるのもお構いなしにリードさんはコナー捜査官を突き飛ばす。コナー捜査官が上体を少し揺らしただけで、倒れることはなかった。その様子が更に癪に障ったらしく、リードさんの額に青筋が浮かんだ。

短気なリードさんのことだから、懐の拳銃を抜いてしまうかもしれない。


「リードさん」

「あ゛ぁっ?お前も何か文句あんのか?」

「ジャケットの袖の部分が汚れています。洗濯しておきましょうか?」

「・・・お前、ほんと掃除しかできねーんだな。空気も一切読めやしねぇ!」

一瞬ぽかんとしたリードさんが馬鹿にしたように笑って言う。それに何か言おうとするコナー捜査官をアンダーソン捜査官が止めているのを後目に、リードさんが投げつけてきたジャケットを受け止めた。

「後で持ってこいよ!」

「わかりました、リードさん」

機嫌は良くなったらしくさっさとその場を去っていくリードさんの背中へ向けて返事をし、ゴミ袋を手に僕も離れる。




「コナー、お前なんでわざわざ突っかかったんだ?そんなに気にするようなことでもなかったろう」

「・・・彼が良いように扱われている様子が、見ていて、少し」

「本人も言ってたろ、あいつは清掃用アンドロイド。嫌がってる素振りもなかった」

「そうかもしれないですが、僕は、その・・・」

そんな会話が去り際にちらりと聞こえたけれど、コナー捜査官って実は変異体だったりするのだろうか。気遣いが人間と同レベルか下手すればそれ以上だ。




戻る