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08


今日は市警敷地内のゴミ拾いだ。

普段は外の木々や花壇の花々は業者のアンドロイドが担当するのだけれど、昨晩の大雨と強風のせいで敷地内が落ち葉やら飛ばされてきたゴミやらで汚れてしまったため、緊急措置として僕が掃除することになったのだ。因みに木々と花壇の手入れは明日派遣されてくるアンドロイドが担当するため、僕がするのは本当に簡単な掃除だけだ。

敷地内とはいえ、久しぶりに外に出られた僕の気分は良い。自動運転の車が道路を走る様子を見ると自然とテンションも上がる。


「珍しいですね。貴方が外の清掃をするなんて」

「おはようございます、コナー捜査官。昨晩の大雨と強風の影響で、緊急措置として清掃にあたっているんです」

サイバーライフから出勤してきたらしいコナー捜査官が近づいてくる。

ただのアンドロイドにわざわざ声を掛ける必要はないはずだけれど、本人も言ったように普段は室内にいる僕が珍しくて近づいたのだろう。

説明をしながらも道に転がったゴミの塊を片付ける。缶や折れた枝に交じって黄色い塊があるのに気づき、軽くかき分けて拾い上げる。

拾い上げたそれが鳥の死骸ではなく鳥を模したアンドロイドだと気づいた僕は内心大興奮した。動物のアンドロイド!雑誌で見たことがあったけれど、実物が手の中にある。

もしかして電源を入れればまだ動いたりするのだろうか。じっと見つめれば、視界に『再起動可能』の表示が出る。後でこっそり再起動するよりも今すぐに動くところが見たくなった僕は表示される文字に従って鳥を再起動させた。

手の中でもぞりと動いた鳥がむくりと起き上がり、僕を見上げる。ぱたぱたと羽を動かし、僕の手の中から飛び立ち、かと思えば僕の真上を幾度か旋回してから僕の肩に止まった。


「此処に飛ばされてくる間に衝撃を受けたんでしょうね。初期化され、再起動した貴方が主人として登録されたようです」

一連の様子を見ていたコナー捜査官の言葉に「しまった」と思う。デトロイト市警の備品である僕がアンドロイドとはいえ鳥を飼えるわけがない。もう一度電源を落とせばいいのだけれど、肩にとまったままこちらをじっと見つめている鳥は的確に僕の良心を刺激する。

「そのまま掃除を続けるんですか?」

「優先順位は、掃除ですから」

考えても答えは出ない。だったら先に優先事項として表示されている掃除をするのが一番だ。鳥は僕の肩にとまったまま動かないが、もしかするとそのうち生きた鳥のように僕の肩から飛び立っていくことだってあるかもしれない。



・・・名前はカナリアの『リア』にしようかな。

アンドロイドがアンドロイドを飼えるわけないけれど、掃除が終わるまでの短い間ぐらい夢を見たっていいだろう。




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