めっちゃ働くお母さん「お、今日は母さんが帰ってくる日だ」
東卍の集会が終わった後、携帯を見た三ツ谷はそう言って口角を上げた。
突然なんのことだかわからない武道は「えっ、三ツ谷くんのお母さん?」と首を傾げる。他の面々は慣れているのか「おぉ、今日だったのか」「良かったな三ツ谷」と軽く声をかけるばかり。
「うち母子家庭でさ。母さんは女手一つで俺たちを育てるためにいつも一生懸命働いてるんだ」
「へぇ、立派な人なんだ」
「あぁ。けど母さん、働いてる間に俺たちが寂しくしてるんじゃないかって何時も心配してる。そんな母さんがここ数年で考えたのは『一定時期に稼ぐ日を集中させそれ以外は家族にあてる』こと。だからより稼ぎがいい仕事のために、何日か家を空けるんだ。で、今日はその仕事が終わって帰ってくる日」
嬉しそうなのが表情だけでなく声からも伝わる。三ツ谷の年頃で母親のことを話せば揶揄ってくる者もいそうなところだが、東卍のメンバーで揶揄う素振りを見せる者は一人だっていない。三ツ谷が母親をいかに大事にしているかを、皆よく理解しているからだろう。
「今回は確かマグロ漁船だったな。おっ、写真も送られてきてる」
そう言って流れるように三ツ谷が武道に見せた携帯の画面には、にっかりと笑ってマグロを両腕で掲げる思ったよりもずっと若い女性がいた。
「え、若っ、は、マグロでかっ、え?え???」
「ははっ!うちの母さん力強くてさ、この間は海外行ってスタントマン業で荒稼ぎして帰ってきたんだ。すげぇだろ」
自慢の母親なのだろう。三ツ谷は楽しそうな顔で母親の武勇伝を語る。
「もっと前なんか、賞金欲しさに指名手配犯を・・・」
「たーかしー!迎えに来たよー!」
集会場である神社に響く元気な女性の声。
全員が釣られてそちらを見れば、Tシャツとジーンズ姿の、シンプルだがスタイルの良い女性が一人立っていた。小脇にヘルメットを抱えてにかりと笑う姿は健康的なエロさがある。
「母さん!迎えに来なくていいって言っただろ?」
「久しぶりに可愛い息子と一緒に我が家に帰りたかったの!ほら見てこれお土産!今日はマグロパーティーだからね!」
「バイクの後ろに冷凍マグロ括ってんの初めて見た」
「私も初めて括った!此処にくるまでにちょっとずつ解凍したから、家に帰りつく頃には食べごろだからね!」
駆け寄ってくる三ツ谷と軽いハグをした女性はその後ろにいる東卍メンバーに向けてにこりと笑った。
「何時もうちの隆と仲良くしてくれて有難う。これからも仲良くしてね!」
「母さん、それちょっとはずい・・・」
苦笑いを浮かべた三ツ谷は「ほら、早く帰ろう」と女性の腕を引いた。
あとがき
お金を稼ぐこととそれを子供たちのために使いまくることが好きなお母さん主。
息子のやることなすこと全てを全肯定してるけど、息子も息子でそんな母親を悲しませないように一定のラインは超えない。ただしバイクの無免許運転はする。
キレた時の言葉の端端から漏れでたかもしれないが、お母さんは割と口が悪い。
最近更に息子が少女漫画に出てくる不良系イケメンに成長してて慄いている。
あと、息子から「母さんの見た目ならこれぐらい余裕だろ」と可愛いワンピースをプレゼントされてときめいた。
それはそうと、息子は最近母親と一緒に歩くと『エロい年上彼女と一緒に歩いてるようにしか見えない』と言われて困ってる。年相応の主婦っぽい恰好をさせると『エロい人妻と若い燕にしか見えない』と言われるため、究極の選択で前者の方で妥協することにした。
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