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「#エロ」のBL小説を読む
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「名前さんってどうして風間さんと付き合おうと思ったの?」
本部で偶然出会った可愛い後輩にジュースを奢ってあげたら、そんなことを聞かれた。
「お、菊地原くんってば直球だねぇ」
「いいから早く、理由教えて」
自分の分の珈琲の缶をかしゅっと開けて一口のみつつそう言うと、後輩の菊地原くんから冷ややかな視線が。元々俺は敬われるような人間じゃないけれど、それを差し引いても菊地原くんの言動と態度はちょっと失礼だ。歌川くんの普段の苦労が窺い知れる。まぁ菊地原くんが可愛いから許すけど。
「教えて欲しいって態度じゃないけど、まぁいいか。簡単に言えば、勘違いかな。俺実はショタコンでさ、でも実際のショタと付き合おうとしたら犯罪じゃん?だから、ぎりぎり犯罪にならない高校生ぐらいを狙おうと思ったわけ」
「うわっ、最低」
「ドン引きの表情やめて、今は蒼也一筋だから。まぁ蒼也と付き合う前なら菊地原くんは俺のドストライクだけどね、速攻追い詰めてげっちゅしてたわ」
一歩二歩、菊地原くんが俺から遠ざかる。そんなにあからさまに警戒しなくたっていいのに。
「何でこの人ボーダーで働けてるんだろ、普通とっくに逮捕されてても可笑しくないのに。というか、勘違いって何」
「蒼也を高校生と勘違いしてアタックして、付き合い始めてから実は同い年だと知った」
「内容が最低過ぎ。それって風間さんが最初から同い年ってわかってたらアタックしなかったってことでしょ?」
「菊地原くんはっきり言い過ぎぃ。まぁそうなるね」
笑いながら言えば、菊地原くんが静かになった。てっきり即座に罵倒されると思ったのにと菊地原くんを見れば、俺が上げたジュースのペットボトルを握りしめたまま少し俯いている。
「・・・本当に最低じゃん。見損なった」
「ガチトーンで見損なったって言われた。まぁ見損なわれるってわかってて言ったけど」
「はぐらかせばよかったじゃん。聞いて後悔したんだけど」
その言葉に俺は「んー」と言って眉を下げる。
はぐらかせばはぐらかしたで菊地原くんの機嫌を損なってしまうのは容易に想像できたし、このことは蒼也だって知ってる。今となってはちょっとした笑い話程度に酒の席で話すことだってあるのだ。が、まだ若くて実は純粋な菊地原くんには嫌な話だったらしい。ちょっと悪いことをした。
「折角菊地原くんが聞いてくれたし、嘘を教えるのもなーと。それに、昔は兎も角今は蒼也にぞっこんだし」
「名前さんが風間さんにぞっこんとか心底どうでもいい。・・・風間さんが可哀相だなって思っただけ」
「わー、流石は風間隊。隊長の幸せ第一かー、これじゃ俺は悪役決定だわ」
「ふざけないでよ。風間さん悲しませたら承知しないから」
ぎっと睨まれてしまって肩をすくめる。本当に、菊地原くんは蒼也のことを慕ってるなぁ。そんな慕ってる相手に俺みたいな虫がついてたらそりゃ嫌だろうけどさ。
何て弁解しようかな、なんて考えていると突然菊地原くんが後ろを振り向いた。釣られて菊地原くんの視線の先を見れば、今まさに話題に出てきた蒼也が「探したぞ、名前」と言って片手をあげていた。
「どうしたんだ菊地原、浮かない顔をしてるな」
「名前さんから最低な話を聞いたからですよ、風間さんよくこんな人と付き合えますよね」
「菊地原くんが俺が蒼也と付き合おうと思った理由を教えてって言うからさ、教えてあげたら好感度が一気に下がったっぽい」
蒼也は俺と菊地原の話を聞いて「成程な」と頷いた。
これ以上俺が何を言っても菊地原くんは俺への好感度を上げてはくれないだろうし、此処は菊地原くんの隊長であり俺の可愛い恋人の蒼也に任せるしかない。どうか俺の好感度がせめてこれ以上下がらないようなフォローをして欲しい。
「安心しろ菊地原」
俺の想いが通じたのか、蒼也は菊地原くんの方を見て普段ならあまり浮かべない笑みを小さく浮かべて口を開いた。
「俺は名前がショタコンだと知って近づいて、名前の前ではあえて自分の年齢を言わなかった。むしろ俺が名前を仕留めたと言っても過言ではない」
「え、何それ初耳なんだけど」
「実は同い年だというネタばらしのタイミングも全て計算していた」
「衝撃の事実!」
好感度が下がってしまった俺のフォローかと思えば、今まで知らなかった事実が発覚してしまった。何、俺実は蒼也にハメられてたの?
「名前と偶然を装い出会うところからネタばらしまで、随分と作戦を練ることになったが結果大成功で俺も満足している」
「うーん、俺も蒼也と付き合えたのは大満足だけど、衝撃過ぎて頭が追い付かない」
「名前をオトすためならどんな手でも使ってやると思っていたから、今が最高に幸せだ」
「有難う蒼也。でもやっぱり頭が追い付かないや」
ゲットした方だと思ったら実はゲットされた方だったらしい。元々行動力がある方だとは思ってたけれど、まさかここまでだったとは。
「・・・ふーん、風間さんの計算勝ちだたってことね」
「あぁそうだ。菊地原も、もしそういう相手がいるなら相談にのろう」
「別に今はそういうのいないからいいけど。・・・あ、名前さん、せいぜい風間さんに見捨てられないように頑張ってください」
「わかってるわかってる。今になって蒼也に捨てられたら俺ショックで寝込むわ」
そう言って苦笑する俺に、蒼也は「捨てないから安心しろ」と微笑んだ。好き。
理由なんて人それぞれさ
「名前さんデレデレし過ぎ、キモイ」
「菊地原くんはもうちょっと俺に優しくしてくれたっていいと思うよ」
「優しくする理由がないんで無理です」
「あー、傷ついた。蒼也癒して」
泣き真似をしながら蒼也に抱き着けば菊地原くんから汚物を見るような目で見られた。辛過ぎるんですけどー。
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