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「風間さんって、ちんまいですよね」

その言葉が名前の口から出た瞬間、その場はしんっと静まり返った。



防衛任務の後に偶然出会った風間隊の隊長である風間の誘いで風間隊と共にカフェに入った名前は、冒頭の台詞を言った張本人であるにも拘わらず、手元にあるデザートのプリンに夢中でその場が静まり返ったことにすら気付いていない。

プリンを美味しそうに食べているばかりで、先程自分が言った言葉の重大性になんてこれっぽっちも気付いていない様子だ。

チームを組んでいる彼等とは違い、本部所属のフリーのB級隊員である名前は割と普段から風間に可愛がられている部分がある。会えば声をかけて貰えたり、ランク戦と称していろいろとアドバイスを貰えたり・・・要するに、風間のお気に入りなのだ。


「そうか?」

「はいー。ちんまくって、可愛いです」

だがいくら可愛がられているとはいえ、風間はB級の名前より上位ランクのA級。しかも21歳と年上。その相手に『小さくて可愛い』は失言だ。

通常なら怒られても、最悪殴られても仕方のない発言。自分の失言に気付かず呑気にプリンの最後の一口に舌鼓を打つ名前に風間は押し黙った。

黙っている風間にはらはらしているのは他二人の方だ。二人とも何か口を挟むことはないものの、風間と名前の次の会話に耳を傾けている。

名前を一等可愛がっているのは風間だが、歌川や菊地原だって名前を可愛がっているつもりだ。特に風間が『特別な意味で』名前を可愛がっているのを知っている分、変に話を拗れされたり仲違いをされたりは本意ではないのだ。


「苗字は小さい方が好きか」

風間の問いかけに名前は「ん?」と首をかしげる。そして「んー」と考えるようなうなり声をあげてから、にこっと笑った。

それはまだ少年のあどけなさを前面に出した、言い換えればあざとい笑顔。


「自分より大きいのはなー、ちょっとなー。風間さんぐらいのサイズが丁度良いです」

「そうか」

「はい」

返事をしつつ空っぽになったデザート皿を物足りなさそうな顔で見つめる名前は、風間の問いかけを大して気にしていないようだ。

風間の方もそれに憤るわけでもなく、静かに「ならいい」とだけ言って頷いた。


「あっ」

「今度はなんだ」

「でもでも、もし風間さんに遅めの成長期が来て僕より大きくなっちゃっても、風間さんなら許してあげますよ。僕、風間さん大好きなんで」

「・・・そうか」

「はい」

だっていっつも奢ってくれるし、という余計な一言を笑顔のままで言う名前に風間はふっと笑う。


「お前は相変わらず素直なヤツだな」

「風間さんはちんまくって可愛いだけじゃなくて、僕のこと怒らないから好き。二宮さんとかはすーぐ怒るんですよ」

「何かしたのか」

「二宮さんは顔も言動もやることも怖いですねって言っただけです」

「おそらくそれが理由だろうな。お前の素直さは美徳だが、欠点でもある」

「その欠点を優しく包み込んでくれる風間さん、だーい好き」

無邪気に笑う名前の発言に満更でもなさそうな顔で「・・・そうか」と返事をする風間に、その様子を見守っていた歌川や菊地原も小さく息をつく。フリーの名前は良くっても、同じチームである彼等は風間の機嫌が悪くなると少々困るのだ。


「デザート、もう一品頼んでいいぞ」

「やった!風間さんちんまいのに太っ腹!好き!」

ちんまいは余計だ、と言いながらも風間は小さく笑った。





ちんまくてかわいい





「あ、歌川さんと菊地原さんも好きですよ」

「はいはい、有難うな」

「ついでっぽく言わないでよね、なんか感じ悪いよ名前」

「えー、酷いや菊地原さん」



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