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※ウォッカ成代り主。


生まれた瞬間から既に格差というものは発生している。

金持ちの家に生まれればその子供も金持ちだし、逆に貧乏な家に生まれればその子供も貧乏だ。

俺の生まれた家は貧乏で、父親も母親もギャンブル好きで多方面に借金をしている所謂クズだった。計画性無しに俺という子供を作り更に生活が困窮すると、生まれてきた俺のせいだと馬鹿なことをほざく程度には、クズだった。

そんなクズ共は俺が歩いたり喋ったりできるようになると、あの店からあれを盗んでこいだの、あいつの鞄の中から財布を取ってこいだの、小さくも確実な犯罪をおつかい感覚で言いつけるようになった。

勿論俺に拒否権などなく、店や他人から物を盗んでは両親に献上した。バレた時は酷い目にあったが、子供だからと見逃されることが殆どだった。そう、殆どだ。極々たまに子供相手に暴力をもって説教する輩もいた。

ボロボロになりながらも成功率はなかなかのもので、味をしめたクズ共が言いつけるおつかいの頻度は爆上がりした。

・・・その結果、うっかり堅気じゃなさそうな人から財布を盗んでしまい、俺は死にかけた。

死んで詫びるか生きて償うかしろ、因みに生きて償うというのは「そのコソ泥能力をうち(犯罪組織)で活かせ」という意味である。

どちらを選んでも明るい未来なんてなさそうだが、生きて償う方がまだマシかな?と小さな脳みそで考えた俺は、見事犯罪組織の下っ端として受け入れられた。
下っ端だからかいろんな雑用を朝から晩までやらされたが、合間合間でしっかり食事も取らせてくれて、仕事に支障がないようにと簡単な読み書きや作法なども教えてもらった。

何だかんだ、クソ共のいる家で過ごすよりもいい生活が出来てるんじゃ?と思った頃、俺は運命の出会いを果たした。


犯罪組織の大幹部様。尊敬する兄貴。


うちの組織は幹部になると酒の名前を与えられるというお洒落な風習があり、俺が運命的な出会いを果たした兄貴にも「ジン」というコードネームがある。

ただ俺にとってはコードネームを呼ぶことさえ恐れ多くて「兄貴」と呼ばせて貰っている。兄貴と呼ぶのは俺ぐらいなため、ちょっぴり特別感を感じているのは内緒だ。

出会った最初は幹部なんて知らず、火の付いていない煙草を手に舌打ちしていたからそっと近づいて「火ぃどうぞ」とライターを点火した。ただそれだけだった。

けれど兄貴はその時のことを覚えててくれて、以降荷物運びなどの小さな雑用から援護射撃という大きな仕事も任せてくれるようになった。

あと何年かすれば運転しても怪しまれないぐらいに成長するだろうから、是非兄貴の送迎係も務めたいと本人に言えば、兄貴直々に運転の仕方を教えてくれた。
しかもしかも、俺がクソ共のいる家に帰りたくないと言えば、兄貴は自分の所有するセーフハウスの一つを俺の部屋として使っていいと言ってくれた。それ以降、もうクソ共のもとへは帰っていない。


兄貴は俺を人間として扱ってくれる。邪魔なもの扱いもしないし、奴隷扱いもしない。しっかりやれば「よくやった」と言ってくれるし、機嫌がいいときなんかは兄貴から話しかけてくれる。俺、一生兄貴についていこう。その決意を兄貴に直接言ったら、黒いスーツをプレゼントしてくれた。兄貴もいつも真っ黒な服装だし、これってつまり相棒にしてくれたってことなのだろうか?小さな脳みそで考えた結果だから合っているかはわからないけれど、合ってればいいなと思う。

兄貴と一緒に兄貴の任務について行くことが多くなり、いつの間にやら俺本人も『ウォッカ』というコードネームを与えられた。けれど、俺は変わらず兄貴の後をついて回る。

幹部になれたのは嬉しい。だって兄貴の隣にいても誰も文句を言わないし、兄貴が俺に任せてくれる任務も増えた。周りは俺と兄貴をセットで記憶しているらしく、それもなんとなく嬉しい。勿論それも兄貴に直接言った。翌日兄貴は俺に車をくれた。昇進祝いだそうだ。

毎日兄貴の相棒として組織で頑張る俺の生活は思った以上に輝いている。正直俺は組織じゃなくて兄貴に忠誠を誓っている。組織大好きな兄貴は怒るかな?と思ったが、兄貴に言えば楽しそうに笑われた。別に怒ってはいないらしい。


尊敬する兄貴は、ボスからシェリーという若い幹部の監督も務めている。幹部だけれど実質組織に縛り付けられているだけで組織への忠誠なんて全くないシェリーは、宮野明美という姉がいる。宮野明美は組織に名前があるだけで、ほぼ一般人だ。

研究室にほぼ監禁状態なシェリーと宮野明美を定期的に会わせてやるのも兄貴の仕事らしく、実はスケジュール管理がちょっと下手な兄貴はうっかりその日を忘れたりする。そういう時は俺が代わりにその場を設けるのだが、何故かシェリーと宮野明美にはそのことを感謝されている。たまに宮野明美がシェリーと食べるために持ってきたお菓子を少し分けてくれるのだが、そんなに感謝することだろうか?


あと、兄貴は新人幹部×3の教育係もボスから任されている。俺にはいろいろ教えてくれた兄貴だったけど、新人幹部×3のことは初見から気に入らないらしく、教育する意欲が沸かないらしい。だから俺が組織内での経費の落とし方とか、武器の調達方法とか、教えられる範囲で教えた。教育ってものはどうやるかわからないから俺ができるのはそのぐらいだったけれど、何故か新人幹部×3にはお礼を言われた。お礼を言われるのは嬉しいけれど、やたら飲みにいかないかと誘ってきたり、兄貴のこととかを聞いてくるから、あの3人はちょっと苦手だ。

・・・よくよく考えれば、兄貴って沢山の仕事を任されている。俺がいるからにはきっちりスケジュール管理をするつもりだけれど、これじゃいつか兄貴が倒れてしまうんじゃないだろうか。心配で心配で、最近では栄養士の資格をこっそり取った。兄貴の健康は俺が支えるんだ!因みにこれを兄貴に言ったら、食べたい献立を教えてもらえた。

兄貴と出会ってから結構な月日が経過したが、もしかすると俺は兄貴に一番信頼して貰えているのではないだろうか。



「兄貴、かゆいところはありやせんか?」

「・・・ん、ねぇよ」

特に、風呂で兄貴の綺麗な銀髪を丁寧に洗っているとき、そう思うのだ。
ついでにこっそり習得したヘッドスパで兄貴を癒し尽くし、うとうとし始める兄貴になんとか頑張って貰って風呂から上がり、ドライヤーで兄貴の髪を乾かした。今度こそ兄貴は寝落ちした。

「兄貴、兄貴、ベッドに運びやすから」

「んん・・・」

唸り声を返事と受け止め、俺は兄貴を抱っこして寝室に運んだ。

兄貴から与えられたセーフハウスには兄貴もしょっちゅう帰ってくるから、ほぼ俺と兄貴のセーフハウスだと考えていい。

寝室のベッドに兄貴を運び、そっと下ろすと兄貴が薄っすら目をあけて「ウォッカ」と俺を呼ぶ。何ですかい?と近づけば首に腕が回ってきた。お前も寝ろ、という意味だと思う。

台所にまだ洗っていない食器があるけれど、まぁ朝洗えばいいかと俺もベッドに寝転んだ。

こういうことがよくあるから、寝室のベッドは二人で寝ても狭くないぐらいの大きさにしてある。


「んー・・・」

「ここにいやすよ、兄貴」

ぐりぐりと胸に顔を擦り付けてくる兄貴を腕に抱き込むと、兄貴の寝息が聞こえ始めた。丁寧に洗い上げた兄貴のシャンプーの香りを感じながら、俺もゆっくり目を閉じた。




それではおやすみなさい




あとがき

ウォッカ成代りには夢と希望が詰まってる。
質問のコメント【DCのジン夢が読みたいです】もあったので、更新。

・ウォッカ成代り主
親元よりも組織の方が人間らしい生活が出来て吃驚。
自分を必要としてくれて、尚且つ人間扱いしてくれる兄貴が大好き。
兄貴から信頼されてるのをひしひしと感じているため、これからも兄貴に尽くしていくつもり。
思ったことはすぐに兄貴に報告する。報連相がしっかりしてるタイプ。

・ジン兄貴
煙草を吸おうと思ったらライターなかった。と思ったら横から火が差し出された。
気がきくじゃねーかと思って有効活用しようと思ったら予想以上に優秀で、しかも露骨に懐かれた。その露骨さが満更でもない。
気付いたら自分のためにスキルアップしていく姿は好印象。
ただ、思った好意を直で伝えてくるから正直恥ずかしい。嬉し恥ずかしで本人も無自覚にウォッカに貢いでしまう。
報連相はしっかりしてないけど、ウォッカが察してくれるから問題ないと思ってる。
ウォッカは俺のだ誰にもやらねぇ。



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