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※早人成代り主。


パパが新しくなった。

新しいパパをママも気に入っているみたい。

夫婦円満なのは良いことなのよって昔おばあちゃんが言ってた気がするから、今の状況はきっととても『良いこと』なのだと思う。




「パパ、おかえりなさい」

「・・・あぁ、ただいま名前」

帰ってきたパパに抱き着けば、パパは少し戸惑いつつも僕を抱きしめてくれる。

戸惑うのも当然だよね。新しいパパは今日初めて僕を抱きしめたんだから。


「ママは今ご飯作ってるよ。ねぇパパ、一緒にお風呂入ろう」

「・・・いいよ。一緒に入ろうか」

前のパパがどんな風に僕に接してたかわからないからか、新しいパパは僕のお願いは大体受け入れてくれる。

パパと一緒にお風呂に入って、パパの背中を流してあげた。


お風呂から上がるころには晩御飯も出来てるかな。最近のママは張り切ってて、料理も美味しい。前のご飯も美味しくないわけじゃなかったけど、今の方がずっと美味しいし、何より家族三人でご飯を食べるようになったのもパパが新しくなってからだ。

きっと今の僕等は『円満な家庭』を築けてる。

でもねパパ、あのね、僕は知ってるよ。パパはきっととても危ない人で、そのせいでいつかこの平穏が崩れてしまうかもしれないんだよね。知ってるよ、僕、知ってる。


「ねぇパパ、相談があるんだけど」

「相談?どうかしたのか」

パパと一緒に湯船に浸かりながら、僕はパパが帰ってきてから言おうと思っていたことを言った。


「僕、学校で虐められてる。学校に行きたくない」

「・・・虐められてる?」

「うん。僕、とっても辛いんだ。でもこの家から通える小学校はあそこぐらいしかないから・・・ねぇパパ、僕、転校したい。別の場所に引っ越したい」

俯いて、目にぐっと力を籠めればぽろぽろと涙が零れてくる。

そうするとパパはしばらく黙ってから、恐る恐ると言った感じに頭を撫でてきた。


「・・・そういうことは、しのぶにも聞いてみないとな」

「ママが良いって言ったら、引っ越してくれる?」

「・・・どうだろう。相談してみないと」

内心快くは思っていないみたい。どうしてだかわからないけれど、パパはこの街に執着している。でもその執着が、とても邪魔なものだと僕は理解している。

だからこそ、パパをこの街から引きはがさないといけない。そうしないといけない。


「お願いパパ、僕とっても辛いんだ」

結論は急いだ方が良いけれど、今すぐじゃなくていい。今は『街を離れる』という選択肢をちらつかせるだけでいい。付箋は貼れた。

「わかった、しのぶに相談してみよう」

「うん、有難うパパ」

ぎゅっとパパに抱き着いてそう言うと、パパがまたぎこちなく僕の頭を撫でた。

好意的な妻に息子、円満な家庭、パパはきっと今の家庭が好きになってきている。僕やママのことが、好きになってきている。

あと少し。あと少しで、パパの中にある『執着』の一部を僕らに書き換えることが出来る。


・・・パパが結論を出してくれるまでは、僕がどうにかしてあげるね、パパ。







新しい息子として






「夫婦円満なのは良いことだ。それを壊すのも壊されるのも悪いことだ。だったら、僕は不安要素の全てを排除する」

僕は迷いなく矢が導く人へと矢を投げる。パパのお父さんが隠し持っていた不思議な矢だ。

新しいパパのお父さんだから、僕の新しいおじいちゃんになるのかな?その人には「パパを守るためだよ」と言って、パパには内緒にして貰っている。

パパの敵は多い。だからその敵を少しでも減らせるように、減らせなくてもパパから注意を逸らせるようにしないといけない。

でもまずはこの街からなんとしてでも離れないと。きっとパパは何時か衝動を我慢できなくなるから、そしたらパパの居場所が特定されちゃう。


「パパとママは、僕が守るよ」

前のパパが嫌いだったわけじゃない。けれどあまりに関わりが少なすぎたんだ。

新しいパパをママは愛してる。パパを愛しているママは幸せそうだ。そんなママにパパも満更でもなさそうで、最近ではパパもママを愛してきている。ママだけじゃなくて、僕のことだって『息子』と認識し始めているんだ。

それでいい。それが一番幸せなんだ、きっと。




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