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※微グロ・流血表現注意


僕は堕落王ファムトに作られた人造人間。

別の研究をしてる時の休憩中に生み出されて、本人曰く「何でこんなの作っちゃったんだろ」というイマイチ作品がこの僕だ。

かの有名な堕落王ともなれば人造人間なんて瞬き一つの労力で作れるし、もう一回瞬きをの労力を使えば特殊な人間を作る事だって可能。

因みに僕の特殊性とは『死んでも生き返る』という実にありがちなもの。本人が「何でこんなの作っちゃったんだろう」と僕を評価するのも頷ける。

死んでも生き返る様に作っちゃったから廃棄しようとしても出来ないし、やろうと思えば不死を殺す方法だって発明出来ちゃうだろうけど失敗作に裂く労力はないってことで、今現在の僕は製作者に完全に放置されている。別に悲しくなんかない。

誕生直後から既に成人男性な僕はあっさり堕落王に不法投棄され、ものの見事に浮浪者の一員と化した。まぁ偶に勝手に里帰りしては殺されるけど。前回なんて冗談で「お父さん」と呼んだら殺されてしまった。そんな僕は今日も元気です。

死なない身体だからHLでの生活はイージーモードだけど、ぶっちゃけ死ぬ時って普通に痛いんだよね。だって無痛じゃないから。


「だからもう殺すの止めておくれよぅ、僕は不死ってこと以外は普通の人間なんだよぅ」

「君の事は十分にわかった。だが、君は堕落王についての情報を殆ど口にしないじゃないか」

「んー、口にしないんじゃなくって普通に知らないんだよね。あっ、アリギュラちゃんの好きなブランドとかなら知ってるけど」

「非常にどうでも良い」

「あ!それアリギュラちゃんに言ったら怒るから!なんたって僕がそう言ったらコンマで細切れだったから!・・・はっ!『コンマ』で『コンマ』切れ!」

「詰まらないギャグだ」

「酷いやー」


がっくりと下を向きたかったけど、それは出来なかった。頭が固定されているのを忘れていた。もっと言うなら、僕は椅子状の拘束具に縛り付けられているため、頭どころか全身動かせないわけだけれども。

そんな僕の目の前の椅子に座って足を組んでいるのは、僕を拘束した張本人のスティーブンくんだ。彼はライブラという組織に所属している、堕落王ファムトの敵と言える存在だ。

だからこそ僕は彼に捕まり拷問をされている。つい先程まで麻酔無しの抜歯をされたり、舌を焼かれたり、眼球に細い針を刺されたり、何故か顔面を集中的に拷問されていた。

つい先程ようやく舌が回復し、こうやって喋り始めたわけだけれど、もしかするとこういう風に僕がしゃべり始めるのが嫌で拷問を顔面に集中させたのだろうか。舌が回復しただけで顔面はぐちゃぐちゃだから、ちょっと顔面への拷問は休憩して欲しい。実は想像を絶する程痛い。


「全く、僕も暇じゃないんだがね」

大きくため息を吐いて、一度席を立つスティーブンくん。戻ってきた彼の手には有名なチェーン店のロゴが入った紙で包まれたサブウェイ握られていた。

椅子に座りなおした彼はサブウェイに齧り付く。


「ねぇ、それ美味しい?」

「まぁね」

あ、焼けた鉄を押し付けられたせいで焼け爛れていた鼻が回復してきた。美味しそうな血肉のニオイに交じって美味しそうな匂いがする。

「一口頂戴よ」

「顔面ぐちゃぐちゃの野郎に分けてやるサブウェイはないなぁ」

「これやったの君なんだけどなー。というかよくこんなグロいのの目の前で食事出来るね」

片方の眼球にはまだ針が刺さったままだし、抜歯のせいで喋るたびにべちゃべちゃ血が噴き出してるんだけど。普通の人なら見てるだけで具合悪くしちゃうそう。・・・あ、こんなことをした張本人だし、普通なわけないのか。


「こら、今失礼なこと考えただろう」

「考えてないよ。うぇぷっ、やえへっ、しはふははないえー」

血まみれの舌を掴まれて「やめて、舌掴まないでー」と言うも「はははっ、何を言っているかわからないな」と舌を引っ張られた。手が血まみれになるのも気にしてないらしい。しかもその手で再びサブウェイを食べ始めるんだから、やっぱり普通じゃない。


「血を全て抜き取っても死なない、毒を注射しても死なない、ミンチにしても死なない、飢えでも死なない、全く君はどうすれば死ぬんだ」

「一応試されたこと全てで僕は死んでるけどねぇ、生き返ってるだけだよ。でも完全に死ぬ方法なんて、そんなの僕も知りたいよ。堕落王ファムトは僕を処分するのも面倒で不法投棄したんだ。堕落王ファムトが処分を放棄したなら、僕にはどうすることも出来ないよ」

「君は死にたいのか?」

「死んで生き返るのはもう面倒なんだ。だって死ぬのは痛いし。生き返ったら、もう一度痛い思いをしないといけないんだよ」

「ふーん」

自分から聞いてきた癖に、興味なさげだなぁ。酷いや。

サブウェイも半分以下になってきたし、そろそろ拷問再開する感じかな?あーあ、短い休憩だったなぁ。

思わずふぅっと息を吐くと、突然口に食べかけのサブウェイが突っ込まれた。

噛むよりも前にどんどん口に押し込まれてえずく僕をスティーブンくんは笑顔で見つめている。


「もうおなか一杯なんだ。代わりに食べてくれ」


何とか鼻で呼吸をし、サブウェイに噛り付く。口の中で血まみれじゃなければもっと美味しかったんだろうなと思いながら、何とか噛んで飲み込んだ。

サブウェイがなくなり、げほごほと咳き込む。あ、鼻水出た。

「ははっ、汚い」

「うぅ、おえぇっ・・・酷いやー」

にこにこ笑う彼に倣ってにこにこ笑う。


「さて、尋問の続きを始めよう」

「尋問じゃなくて拷問だよね」

そう言うとぽんっと頭にスティーブンくんの手が載る。

「拷問に喋る猶予は与えない。僕は君と会話する意思があるんだから、これは尋問だよ」

「うへぇ、暴論だぁ」

「あぁ大変だ、顔の殆どがもう回復している。早く尋問を再開しよう」

「君はそんなに僕の顔が嫌いなの?」

ペンチとピッケルを手にしたスティーブンくんは、僕の問いかけにきょとんとした。


「まさか」


くすくすと笑った彼は僕の頬を撫で、目元と鼻筋をなぞって、そしてまた笑った。

「僕は君の顔が好きだよ。見つめているとどきどきして手元が狂っちゃいそうになるぐらい」

そう言いながら僕の眼球にピッケルを突き立て、ペンチで舌を引き抜いたスティーブンくんは、控えめに言ってサイコ野郎だった。

まぁその指摘は舌を抜かれた僕には出来ないから、また回復してから言おう。




常識の死んだ部屋




びくんびくんと身体を震わせて動かなくなった彼。おそらく死んだのだろう。けれどしばらくすれば生き返る、仮初の死だ。

両目共に潰れ、鼻は引きちぎれ、口があるはずの場所には真っ赤な穴があるだけ・・・

こんな滅茶苦茶で酷い有様な顔が、少しずつ回復していく様を見るのが、実はちょっぴり楽しみだったりする。

そうして回復して最初に見るのが僕で、耳にする声も僕で、声を掛ける相手も僕なんて、そんなの、そんなの・・・


「・・・たまんないなぁ」

口があるはずの場所に唇を寄せれば、ぬちゃりと唇に血だか油だかわからない液体が付いた。



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