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何時も騒がしいヘルサレムズ・ロットの夜道を一人歩くスティーブンに突然声を掛けてくる男がいた。


「お兄さん可愛いね!いくら!?」


明らかに頭の悪そうな、言ってしまえばザップと同系統のクズな雰囲気のある男はどうやらスティーブンを“売り”と勘違いしているらしい。

何をどうすればそんな勘違いをするのか理解に苦しむスティーブンは、出来るだけ穏やかに、そしてはっきり言ってやった。



「ははっ、死んでくれ」

「あれ!?売り子ちゃんじゃないの!?そんなに可愛いのに!?うっそだー、そういうシチュ?そういうプレイ?つれない感じを演出中?」

「はははっ、演出じゃないよ、今すぐ消えてくれ」

いっそ一発蹴り倒して気絶させるのも良いが、余計な騒ぎを起こして何かあれば面倒だ。此処は穏便にこのフザケタ男を撃退しなくてはとスティーブンはにっこり笑った。因みに目は全く笑っていない。

しかしながら男はそんなことに気付かない能天気かつ面倒な頭をしていたのか、にっこり笑ったスティーブンに猶更気を良くして頭の悪そうな台詞を言い続ける。


「いやいやいや、こんな可愛い子なかなかお目にかかれないよ!これを逃したら絶対に後悔するって俺の全細胞が訴えてる!」

「君の細胞はおそらく自分のピンチを悟ってないだけだよ。たぶん君は僕に関わらなければ良かったって後悔する」

「それは無いね!こんな可愛い子とオセッセできるなら俺は死んだって良い!」

「残念だけどする前に死ぬと思うなー、君が」

「いやいや、俺って案外強いから!可愛いお兄さんもたぶん俺にホレちゃうぐらい強いからさ!ねっ!一発やろうよ!絶対気持ち良くしてあげるから!あ、待ってよ可愛いお兄さぁーん」

「ついて来ないでくれ、殺意が膨れ上がるから」

「可愛い子の冷ややかな目とかご褒美ですしおすし!何処までも付いて行くよカワイコちゃん!」

「はははっ、今すぐ爆散して死んでくれないかなー、コイツ」

無駄にメンタルが強い男はスティーブンの言葉に「照れ隠しが可愛いねお兄さん!」と笑った。死ねば良いのにとスティーブンも笑った。







「っていうのが、俺とスティーブンちゃんの馴れ初めだよ!レオナルドくん!」

「へ、へぇ、そうだったんですか」

男、名前はライブラにおけるレオナルドの一つ先輩である。レオナルドよりも長くライブラに所属していて、頭は大分可笑しいが同僚や後輩には比較的親切なタイプのクズである。


「延々と付き纏ったら殺されかけてねぇ、いやぁ!色っぽい足から繰り出される神秘的な技の何と美しいことか!って更に性欲掻き立てられちゃってさぁ、もう一生かけて付き纏うって決めたよね!俺ったら情熱的で献身的!」

「陰湿なストーカーの間違いだ。まさかクラウスに取り入ってライブラに入るとは思いもよらなかったけどな。しかもムカつくほど能力値が高くて使い勝手が良いときた」

書類を片付けながら忌々しそうに言うスティーブンに名前はにっこり笑う。


「可愛いスティーブンちゃんに褒められて俺は今日も性欲ビンビン・・・あ、待ってスティーブンちゃん、部屋の中で技は出しちゃ駄目だぞ!痴話喧嘩に巻き込まれるレオナルドくんが可哀相だ」

席を立ち、今にも名前を凍らせようとするスティーブンを名前が笑顔で止めようとする。傍にいるレオナルドは名前のとばっちりで死にたくはない!と顔を真っ青にしている。


「ほぉ、君には今の状況をそんな風に思っているのか。前々から思っていたが、君は今すぐに病院に受診すべきだよ」

「案外これでも正常だったりするよ!スティーブンちゃんという運命の相手を只管愛しちゃってるだけだよ!アダルティにね!」

「ははっ、死んでくれ」

「今更俺が死んだら悲しんじゃう程度には情が移っちゃってる癖に!」

「・・・死んでくれ」


「今のたった二秒の間が俺とスティーブンちゃんが相思相愛である事を物語ってるんだよレオナルドくん!」

「少年、ソイツの視界を今すぐ滅茶苦茶にしてやってくれ、その隙に僕がトドメを刺す」

「既にスティーブンちゃんには心臓を射抜かれてるから、今更刺さなくたって大丈夫だよスティーブンちゃん!」

「はははっ、さっさと死に絶えてくれよ」

にこやかに殺意を向けるスティーブンを怖がりもせず、むしろ興奮したように「今日も絶好調に可愛いねスティーブンちゃん!」と笑う名前に、今度こそスティーブンの技が襲いかかった。






頭が可哀相な男の被害






「いやぁ、危なかったねレオナルドくん!」

「俺を巻き込まないでくださいよぉ・・・」

「ごめんねー。あ、何か奢ってあげるよ。何食べたい?」


「・・・高いのでも良いですか?」

「むしろ迷惑料代わりにとことん高いの食べて良いよ」

部屋をスティーブンに凍らされ、そそくさ逃げてきた二人は美味しい肉が食べられると評判の店へと足を向けた。



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