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SSS『僕の日常』の場合




▼SSS『僕の日常』小川静流の場合(×荒井)


口内炎が出来た。

右側の頬の内側に出来た、そこそこ大きな口内炎。昨日の夕食の時に誤って噛んでしまった部分だ。

何もしていなくても若干痛いそこは、食べ物や飲み物が触れると更に痛い。

昼休み、お弁当は出来る限り左側で食べる。

時折口内炎に何かが当たると思わず顔をしかめてしまっていたけれど、それがいけなかったのかもしれない。


「口、どうかしたんですか?名前くん」

「えっ」

事もあろうに荒井くんにバレてしまうなんて。

おそらく正直に言ったら厄介なことになるだろうことは明白なのに、荒井くんの「さっさと言ってください」という言葉に「口内炎が出来たんだ」と答えてしまった。・・・正直に言わなかった場合の報復の方が断然怖い。


「へぇ、口内炎ですか。見せてください」

「えっ、い、嫌だよ」

荒井くん相手に現段階の急所である口内炎を晒すなんて命とりだ、と断固拒否の意向を示した瞬間、僕は「えぶっ!」と声を上げた。

何と荒井くんが口の中に指を突っ込んできたのだ。

その指が何かを探る様に動き始め、さっと血の気が引く。

止めて止めて!と荒井くんの腕を叩くも、荒井くんがその指をひっこめてくれる様子はない。何を考えてるんだ!

「ん゛ぐッ!」

指先が口内炎に触れた。

びりびりと口の中に広がる激痛に涙が出そうになる。

「ん゛ん゛ーっ!!!」

「ひ、ひひっ、痛いですか?痛いですよね、名前くん」

何故だが恍惚とした表情で僕の口内炎に爪を立てた荒井くんに、僕は今度こそ泣いた。



(「すみません、君の痛がる顔が面白くて」なんて、全然謝罪じゃない!)




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