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相澤消太の場合




相澤消太さんが閉じ込められたのは
「一緒に閉じ込められた相手とツイスターゲームをするまで出られない部屋」です。
頑張って脱出しましょう。



僕は今、とても気まずい状況にいた。

無言のまま、じーっと僕を見つめている男の人。

「えっと、あの・・・」

「何だ」

迷いながらも声をかければ静かな声で返事をされる。思わず息をのんでしまいつつその男の人・・・緑谷くんのクラスの先生の、相澤先生に向けて声を上げた。

「あの、その・・・こ、困りましたね。部屋、出られそうになくて」

僕と相澤先生は、気付いたらこの何もない部屋にいた。

ただし、床にはやったことはないけど一目は見たことがある『ツイスターゲーム』と呼ばれるものが描かれていて、壁には大きなモニターが一つはめ込まれていて、その画面には『一緒に閉じ込められた相手とツイスターゲームをするまで出られない部屋』という文字が映し出されていた。

それをしないと出られない部屋というのは本当のようで、唯一の出口である扉は押しても引いてもうんともすんとも言わなかった。

誰がこんなことを、というか僕は此処から出られるんだろうか。

どんどん不安になっていく僕に、未だ僕を見つめたままの相澤先生は静かに口を開いた。

「・・・いや、方法ならその画面に書いてあることを試せば良いだろう」

「え?は、はい」

試すというのは、ツイスターゲームのことを言っているのだろう。でも、本当にこれで開くのだろうか。

「試してみる価値はあるだろう」

つい疑ってしまう僕にそう声をかけ、相澤先生はツイスターの模様に近づく。

相澤先生が近づいたあたりで、突然画面の方から軽快な音楽が鳴り始めた。見れば、画面ではルーレットのようなものがくるくると回っていた。

「始まるみたいだな。まぁ、気楽にやるか」

「は、はい」

逆にどうして相澤先生はそんなに冷静なんだろうって思わないでもないけど、取り合えずやるしかない。僕は相澤先生と同じようにツイスターの模様に近づいた。



「次、右手を赤か・・・」

相澤先生はちらりと画面に目をやってから、ぐいっと右手を赤に動かした。

「わっ!あ、相澤先生って凄い身体が柔らかいんですね」

「まぁ、ストレッチはそれなりに。そういう君はガチガチだな」

「それは・・・うっ!左足を、緑・・・」

ぐぐぐっと何とか左足を緑に伸ばす。というか僕は何故『緑谷くんの学校の先生』という遠い関係の人とツイスターゲームをしているんだろう。相澤先生はその点に関して疑問は無いんだろうか。いや、脱出するための手段だからってこともあるかもしれないけど・・・

「うっ、うぅ・・・」

左足を緑に届かせるためには相澤先生の体の下を通さないといけない。

けど既に僕の筋力は限界。体がぷるぷる震えている。

あともう少し頑張れるかと聞かれればもう無理だ。今息を吐いたらそのまま倒れるだろう。・・・そう思った通り、僕は一瞬にして床に崩れ落ちた。

対する相澤先生は涼しい表情のまま「終わったな」と身を起こす。それと同時に、扉ががちゃっと開く音がした。

まぁ途中から相澤先生には勝てそうにないなとは思ってたけど、まさかこんな無様に終わってしまうとは。ちょっと恥ずかしくなりながら僕も身を起そうとすると、そっと手が差し出される。

「ほら、手」

「あ、有難う御座います」

差し出された手を握って立ち上がれば、そのまま手を引かれて扉の方へと歩いた。



「あ、あの・・・」

「案外楽しいもんだな。本当ならわざと負けてさっさとゲームを終わらせるつもりだったんだが、つい長引かせてしまった。君の親御さんも心配しているだろうから、帰りは送ろう」

「えっ、あ、はい、有難う御座います」

一息に喋る相澤先生に目を瞬かせながらお礼を言う。そ、そうか、単純に『相手とツイスターゲームをするまで』だから、始めたらすぐ終わらせて良かったのか。なんで僕あんなに真面目にやっちゃったんだろう・・・恥ずかしい。

「ほら、早く帰ろう」

「は、はい。よろしくお願いします」

緑谷くんの学校の先生、結構親切だな。鳴神学園の先生だとこうはいかないかも・・・

でも何でずっと手を繋いでいるんだろう。実は凄く面倒見の良い先生なのかな?

握られたままの手に疑問を持ちつつも、僕は相澤先生によって無事家に送り返された。


因みに翌日、酷い筋肉痛に襲われることになったのは言うまでもないけれど。




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