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麗日お茶子の場合




麗日お茶子さんが閉じ込められたのは
「一緒に閉じ込められた相手に浴衣を着せてあげるまで出られない部屋」です。
頑張って脱出しましょう。



「わー!いろんな浴衣がありますよ、名字さん」

部屋いっぱいの浴衣とそれを着付けるために使うであろう道具。麗日さんはきらきらした目でそれを見ていた。

『一緒に閉じ込められた相手に浴衣を着せてあげるまで出られない部屋』なんて書かれていたけど、変な部屋だなぁ・・・

「そうだね。えっと、麗日さんは浴衣の着付けって出来るの?」

「おかーちゃん・・・あっ、お母さんが着付けてくれるの何時も見てたから、たぶん大丈夫ですよ!」

「そうなんだ・・・僕は出来ないから、どうしようって」

「あ、そっか。書かれてたのって『相手に浴衣を着せてあげる』でしたもんね」

「うん、どうしようか」

「だったら私が着せてあげますよ!どの浴衣が良いですか?」

名案とばかりにそう言った麗日さんにちょっとたじろぐ。

「えっ、でも、女の子物の浴衣はちょっと・・・」

「こっちには男物のも少しありますよ!」

それを聞いてひとまずほっとする。部屋から出るためとはいえ、女装は出来ればしたくない。

「でも、麗日さんも浴衣着たいんじゃない?さっきからすごく楽しそうだったし・・・」

「もー!名字さんは気にしなくて良いんですよ!取り合えず浴衣選んじゃってください!」

「あ、う、うん」

背中をぐいぐいと押されて、男物らしき浴衣の前に。部屋を出るために着るのであって特に着たい浴衣とかはないから「じゃぁこれを」とあっさり決めた。

麗日さんは「これですね!」と僕の手から浴衣を取って別の場所に置いてあった着付けの道具を取りに行った。


「よーし、ちゃっちゃと着付けちゃいますね!」

「うん、ごめんね麗日さん。あ、すぐ脱ぐだろうし服は着たままでも良いかな?」

「本当は脱いでもらった方が着付けやすいんですけど、流石に私もちょっと恥ずかしいから・・・着たままでオッケーです!」

うん、僕も年下の女の子の前で脱ぐつもりはない。

麗日さんは僕の目の前にしゃがみ込み、さっさと着付けを始める。お母さんの着付けを見てただけだと言っていた気がするけど、手際が良いなぁ。

「上手だね、麗日さん」

「えへへっ、任せてください」

せっせ着付けをする麗日さんの頭のてっぺんをじっと見つめつつ、僕は「あっ」と声を上げる。

「・・・そうだ、僕にも後で教えてよ。良かったら、僕も麗日さんの着付けがしたいな」

「え!で、でも・・・」

「僕ばっかりじゃ不公平だよ。麗日さんも、気に入った浴衣を着ようよ」

あんなにきらきらした目で浴衣見てたんだし、麗日さんも着たいんじゃないかな。そう思って提案した僕に、麗日さんは「ふふっ」と笑った。

「名字さんめっちゃ優しい」

「えっ、あ、そう、かな?」

「そうですよー。あ、着付け出来ましたよ」

優しいと言われてドギマギしてる間にもう出来上がったらしい。

「早いね」

「男の人のは、帯もらくちんだったから。あ!扉開いてますね!」

麗日さんの声に釣られて扉の方を見れば、確かに扉は開いていた。

「えっと・・・じゃぁ、浴衣選んで良いですか?」

「うん。もう扉は開いたし、ゆっくり選んでね」

僕の言葉に麗日さんは「はい!」と元気に返事をして浴衣を選びに行った。

何だか可愛いな、という言葉は流石に口には出さなかった。




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