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倉田恵美




後輩の坂上くんと同じく新聞部に所属している倉田さんという一年生の女子とは、普段はあまり関わりが無い。

けれど会えば挨拶してくれるし、日野先輩の話では部活熱心だっていうから悪い子ではないと思う。

「先輩これ、調子実習で作ったので食べてください」

「あ、うん、有難う」

福沢さんといい坂上くんといい彼女といい、もしかして一年生の中では僕に食べ物を与えるのがブームなのだろうか。

でも受け取らない理由はないから素直に受け取った。どうやら今日の調理実習は蒸しパンだったらしい。美味しそう。

「食べないんですか?」

「あ、食べるよ、うん」

このクダリは福沢さんと同じだ。ただし倉田さんは福沢さん以上に観察してきている気がする。気のせいじゃないなら、新聞部の取材用カメラが手に握られている。・・・食べづらい。

「美味しいですか」

「うん、美味しいよ。倉田さんって料理上手なんだね」

「レシピ通りに作ったんで。あ、先輩そのままストップ」

やっぱり写真を撮るつもりだったらしく、パシャリとフラッシュがたかれる。眩しい。

「えっと、写真は良いけど、出来れば新聞には使わないでね?何か恥ずかしいし」

「大丈夫です、個人用なんで」

「ん?」

個人用って、個人で僕の写真をどうするつもりなんだろう。新聞部の部員同士で話題にしたりするのかな?

残りの蒸しパンをもぐもぐと食べている間にカメラのチェックをしている倉田さん。心なしかその顔は満足そうで、まぁ悪用されないなら良いかって思えてきた。

「・・・愛されぽっちゃり攻め」

ぽつりと小さく呟いた倉田さん。でも僕はその言葉の意味がわからず、首をかしげることしか出来なかった。

ぽっちゃりぜめって何だろう。太った人が沢山乗った満員電車とか、そういうことだろうか。


(彼女の言葉はイマイチわからない)




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