綾小路行人
廊下を歩いていると見知った人の後ろ姿を見つけた。
この広い校内で偶然でも知り合いに会えるなんてなかなかないことで、何となく嬉しく思いながらその後ろ姿に「綾小路先輩」と声を掛けると先輩の肩が激しく跳ねた。
「ひっ!?・・・あっ、す、すまない、細田か」
勢いよく振り返った先輩があからさまに安堵の表情を浮かべたのを見て何となく察する。
「すみません先輩。背後から近づいたりなんかして」
「いやっ、お前のせいじゃない。ニオイでは大川じゃないとわかってたんだ、わかってたんだが・・・」
「シルエットですよね。ごめんなさい、こんなんで」
「違う!大川とお前は全然違う!大川のはこう・・・ブヨッとだが、お前のは、ふわっふわの大福みたいな!」
必死でフォローしてるけれど、その台詞は僕以外にはあまり言わない方が良いかもしれない。フォローになってない。
綾小路先輩には大の苦手な相手がいて、その人もこう・・・なかなかにふくよかな体系をしているようだ。一度見たことがあるけれど、少し親近感を覚えてしまった。体臭はちょっとキツかったけど。
「違うからな細田!お前のことは嫌いじゃないんだ。お前はこう、干した布団のようなニオイがするし、見た目も相まって本当に大福みたいで・・・」
「大丈夫ですから先輩、泣きそうな顔しないでください」
「お前を一瞬でも大川と勘違いした自分が憎い」
今にもむせび泣きそうな先輩をよしよしすれば思いっきり抱き付かれた。あ、この人抱き付きながら凄いお腹揉んでくる。
「お前の腹を揉むと、ストレスが少し減った気がするんだ」
「お疲れ様です、先輩」
学校生活の対するストレスが凄いんだろうな。誰より激しく揉んでくる。
(それにしても先輩、日に日に目がヤバくなっていくけど大丈夫かな)戻る