短編『有能過ぎる清掃員さん』主の場合
クリスマスになればあの世も賑わう。しかし、地獄の獄卒はクリスマスを楽しむだとかそんなことは言っていられない。
むしろクリスマス休暇が欲しいなどとぬかす獄卒が多発するせいで仕事は増える一方。
増えた仕事のシワ寄せで普段より割増でイライラしている鬼灯に他の獄卒も閻魔大王も怯えきっていた。
「・・・鬼灯殿」
「!名前さんですか、すみません今忙しく、急ぎの用でなければ後にしていただけると・・・」
クリスマスでも仕事に熱心なのは五道転輪庁の清掃員である名前も同じこと。そんな名前が持ち場を離れ閻魔庁に訪れるのは珍しいことだ。
「・・・休憩」
「そうも言ってられません。今日中に終わらせないといけない仕事が・・・」
名前が来てくれたことは嬉しい。しかし鬼灯にはやらねばならない仕事がある。例え心底慕っている相手が自分を訪ねて来たからって、そう簡単に仕事を止められるわけ・・・
「・・・プレゼント」
「え?」
「・・・俺も、出来るとこを手伝う」
「プレゼントというのは、その・・・」
「・・・鬼灯殿のプレゼントに、俺がなる」
「有難く頂きます」
仕事を手伝う気満々に「・・・仕事をくれ」と言う名前に鬼灯は今日初めてクリスマスの素晴らしさを感じた。
(貴方がもっと好きになった)