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士郎が部屋で勉強している時、家のチャイムが鳴り響いた。

ペンを置き、ノートを閉じた士郎は「はいはーい」と返事をしながら玄関へと駆ける。



「どちらさま・・・っと、イリヤの友達か?」

玄関を開けてみれば、そこには士郎の妹のイリヤと同じぐらいの背丈の、同じ学校の制服を着た少年が立っていた。


玄関から出てきた士郎の姿を見上げびくりと肩を震わせ、それから「あのっ、えっと・・・」と口ごもる少年。

緊張しているのが一目でわかるその姿。士郎は急かすことはせず、黙って少年の言葉を待った。



「イリヤちゃんの忘れ物届けに・・・あのっ、あっ、僕、名前です」

漸く言葉を発することが出来た名前と名乗る少年に士郎は出来る限り優しく笑いかける。


「そうだったのか。俺は士郎、イリヤの兄ちゃんなんだ」

「イリヤちゃんのお兄ちゃん?」

「イリヤから聞いてなかったか?」

驚いたような顔をした名前に士郎は首を傾げる。すると名前はぎゅっと両手を握りしめた。


「あの、えと・・・まだ、そんなに喋ったことない、から」

「ん?」

「僕、ちょっと前に転校してきたばっかりで、その・・・まだ友達少なくって、イリヤちゃんが声かけてくれて、その、だから・・・」

じわりと目に涙を浮かべる名前に士郎は慌てて「そ、そうだったのかー、ごめんなー」と声を上げ、その頭に手を置いた。

泣きそうだった名前は突然頭に手を置かれてびくりと身体を震わせる。それからぷるぷると震えながら士郎をそろりと見上げた。


「あ、あの・・・」

「あー、悪い。頭、撫でられるのは嫌だったか?」

士郎の問いかけに間髪入れず名前は首を横に振った。

それを見て士郎は小さく微笑み、その頭を優しく撫でた。名前は無言のままそれを受け入れ、もじもじしながら士郎を見上げ続ける。



「・・・イリヤちゃんのお兄ちゃん、優しい」

「ははっ、そうか?」


「イリヤちゃんも優しいから、イリヤちゃんのお兄ちゃんも優しいんだ、きっと」

「士郎でいいぞ。イリヤちゃんのお兄ちゃん、なんて長いだろ?」

「んっ、じゃ、じゃぁ、士郎お兄ちゃん」

もじもじしたまま、恥ずかしそうにそう呼ぶ名前に士郎は思わず声を出して笑う。


「お兄ちゃんかぁ。何だか弟が出来たみたいだなぁ」

まさかお兄ちゃんと呼ばれるとは思わなかったが、妹と同じぐらいの年の少年にそう呼ばれると悪い気はしない。

士郎が笑いながらそう返事をすると、名前の目が輝いた。



「弟・・・弟に、してくれるの?」

「え?」


「じゃぁ、士郎お兄ちゃん、僕と・・・」

名前が嬉しそうな顔で何かを言いかけた時「あっれー?名前くん?」という声が響いた。

名前はパッと振り返り「イリヤちゃん!」と声を上げる。



「吃驚したー。どうして名前くんがいるの?」

「イリヤちゃん、僕にノート貸してくれたままだったから。返しに来た」

「わー!わざわざ有難う。明日でも良かったんだよ?」

名前が鞄から出したノートを驚いた顔で受け取ったイリヤの言葉に、もじもじと恥ずかしそうに俯いた。


「えっと、イリヤちゃんのお家、行ってみたくて・・・」

「そうだったんだ!じゃぁ良かったら上がって上がって!良いよね、お兄ちゃん」

「勿論だ。寛いで行ってくれ、名前」

士郎に名前を呼ばれ、名前は嬉しそうに笑って頷いた。


「名前くん、もうお兄ちゃんと仲良くなったんだね!」

「うんっ、士郎お兄ちゃん、優しい」

ぽぽぽっと頬を赤く染めながら笑う名前を家に招き入れ、士郎が出したジュースやお菓子を三人で一緒に食べながら楽しい時間を過ごした。







「っと、もうこんな時間か。家は?送ってくぞ」

外が暗くなり始めた頃、夕飯までご馳走になった名前は小さく首を振る。


「ううん。大丈夫だよ、士郎お兄ちゃん。じゃあね、イリヤちゃん。また学校で」

「うん!またね、名前くん」

「気を付けて帰るんだぞ、名前。また遊びに来いよ」

二人の言葉に名前は嬉しそうに笑うと、ぺこりと頭を下げ一人で帰って行った。



「お兄ちゃん、すっかり名前くんと仲良しだね」

「物静かだが、良い子だよあの子。イリヤも、名前くんと仲良くするんだぞ」

「勿論だよ。とっても良い子なんだから」






初めましてお兄ちゃん






かつんっ、かつんっ、と名前の靴がコンクリートの道を踏みつける音が響く。


「上機嫌ですね、名前様」


静かな夜道、名前しかいなかったはずが、何時の間にやらその背後に立つ一人の人物。

「そう見える?ふふっ、良いものを見つけてね」

名前の顔ににたりとした、先程とは違う笑みが浮かぶ。

「時計塔には無い部類の品物でね。久々に胸が高鳴ったよ」

にたりにたりと、意地の悪い笑みを浮かべながら声高だかに名前がそう言うと、彼等の目の前に車が現れる。



「士郎お兄ちゃん、早く僕のになってくれないかなぁ」

二人が乗り込むとすぐに発進した車。車内の名前はにたにたした顔からうっとりとした顔へと表情を変え、熱っぽい声で呟いた。



あとがき

裏表の激しい悪役系ショタ。
時計塔所属の魔術師。
イリヤ達の敵か味方かはわからないけど、敵の方が美味しい。たぶん士郎がピーチ姫状態になる。
でもおそらく、最終的には和解してイリヤ達の家に転がり込むというお決まりの流れになると思われ。

ショタにそのショタフェイスに似合わぬ邪悪な笑みを浮かべて欲しい願望。←



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