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- ナノ -
「アーチャーの作る料理は最高ですよ。名前も是非一度食べるべきです」
「アルトリアさんが言うならそうなんでしょうね。僕も一度食べてみたいものです」
少し前の編成で同じチームになってから、アルトリアさんとよく喋る様になった。
彼女はどうやら食べることが好きらしく、あれが美味しかったこれが美味しかったと美味しかったものの話を沢山教えてくれる。
中でもエミヤという名の弓兵が作る料理が格別に美味しいらしく、普段食事にあまり頓着が無い僕でもその話を聞くと一度は食べてみたくなった。
「では作って貰いましょう!私は今日はハンバーグが食べたい気分です」
「今から?でもアルトリアさん、たぶんエミヤさんにも都合があるだろうし・・・」
「きっと大丈夫です!さぁ行きましょう名前!」
アルトリアさんの根拠なき自信に苦笑する暇もなく、腕を引っ張られた僕は半ば強制的に走り出した。
向かう先は僕等サーヴァントに一部屋ずつ与えられている個人部屋のうちの一つで、その扉に向かって「アーチャー!いますか!」とアルトリアさんが声を張り上げた。
「何の用だセイバー」
扉が開き、その向こう側からおそらくエミヤさんであろうサーヴァントが現れた。
「アーチャー!私はハンバーグが食べたいです!今すぐ私と名前のハンバーグを作ってください」
「全く、無茶を言う・・・ん?名前?」
そこで初めて僕の存在に気づいたらしく、アルトリアさんの隣にいた僕にエミヤさんの視線が向く。
「はじめまして。ランサーの名前です」
「アーチャーのエミヤだ。ところで名前、君も腹が減ったのか?」
「アルトリアさんからエミヤさんの作る料理が美味しいと聞いて。でも無理なら僕はまた今度で大丈夫ですから、お気になさらず」
「何を言っているんですか名前!食べたいと思った時に食べずにどうするんですか!」
がしりと肩を掴まれがくがくと揺すられる。食べ物が絡んだアルトリアさんは凄い。
「止めないかセイバー。ハンバーグだったな、それなら作り置きのたねがあったはずだ。名前は?何か食べたいものはあるか」
「アルトリアさんと同じもので」
何が食べたいかと聞かれても咄嗟に思い浮かぶものはない。とりあえずはアルトリアさんと同じものをお願いすればおそらく間違いないだろう。
僕等の要望を聞き入れたエミヤさんは「ついて来い」と僕等を食堂まで誘導した。
そもそもサーヴァントは食事や睡眠が必ずしも必要なわけではないため、こうやって食堂に足を踏み入れるのはまだ片手で数える程度しかない。
さっさと席に着いて「早くしてくださいアーチャー!」と声を上げるアルトリアさんの隣の席に座る。エミヤさんは呆れたようにため息を一つ吐くとキッチンへと消えた。
「・・・美味しそうな匂いですね」
「そうでしょうそうでしょう。アーチャーの作る料理は香りも一級品なのです」
キッチンから漂ってくる肉を焼く良い香りに思わず呟けば、アルトリアさんが誇らしそうな顔でそう言った。相当エミヤさんの料理が気に入っているのだろう。
「待たせたな。冷めないうちに食え」
トレイを二つ手に戻ってきたエミヤさん。目の前に置かれた料理は香りもそうだが見た目も素晴らしかった。
僕の生前の生活では見たことが無い。やはり、時代が進めば食文化も変わるのだろう。
僕がいろいろ考えているうちにアルトリアさんは既に「いただきます!」とハンバーグを食べ始めていて、私も慌てて「いただきます」と言いフォークとナイフを手にした。
「っ!?お、美味しい・・・」
「口に合ったようで何よりだ」
「アーチャー!ライスのおかわりを!」
「・・・君は落ち着いて食べないか」
ハンバーグを一口食べて更に驚いた。ハンバーグ、聖杯からの知識で知ってはいたがこれほどとは。
ただ肉を練り固めたものではない。通常の肉の塊より柔らかく、そしか油も多い。上にかかったソースも肉を活かしていて最高だ。
こんな料理、私は食べたことが無い。
「エミヤさん・・・」
「む?名前もおかわりか」
「貴方に初めてを奪われました。責任を取ってください」
「は?」
がっしりとエミヤさんの手を掴んで力強く言った。
ぱちぱちと目を瞬かせるエミヤさん。
「わかりますよ名前。衝撃ですよね、この世にこのような『快』があったなど」
「えぇ、アルトリアさん。僕は世界を知らなさ過ぎた。エミヤさん、貴方に感謝を。僕に新しい世界を見せてくれました。・・・こんな気持ち初めてです。もっと食べたい・・・いえ、食い尽くしてしまいたいという欲求!このままでは、エミヤさんが嫌だと言っても要求してしまいそうで・・・」
「大丈夫ですよ名前。共にアーチャーに初めてを奪われた者同士、協力しようではありませんか。アーチャー!取りあえずおかわりください!」
エミヤさんのおかげで更にアルトリアさんと仲良く慣れた気がする。これからは二人でエミヤさんの料理を食べることが日課になりそうな予感がする。
「エミヤさん、責任取ってくれますよね?」
僕は笑顔で問う。
「君はっ、いや、君達は・・・」
「エミヤさん?」
手を握られたままだったエミヤさんは何故だか顔を真っ赤にして叫ぶように言った。
「君達は言葉の選び方を間違っている!」
言葉の選び方?と首を傾げる僕の隣で「早くおかわりを」とアルトリアさんが声を上げた。
そういえば話の途中、食堂の傍で誰かの気配を感じたが、すぐにいなくなったため特に気にすることはないだろう。
そうだ、取りあえず僕もおかわりしよう。
聞きようによってはアレ
翌日、何故だかダヴィンチさんに「サーヴァント同士のあれこれに口出しするつもりはないけれど、痴情の縺れでどうこうなるのはよしてくれよ?」と笑われながら言われ、ドクターからは「・・・エミヤに塗り薬渡しといた方が良いのか見当するけど、えっと、ほどほどにね」と言われた。
そのことをエミヤに伝えたら真っ赤な顔で攻撃を仕掛けられたが、僕がランサーだったおかげで何とか防げた。
・・・とりあえず今日もお腹が空いた。アルトリアさんと一緒にエミヤさんのお願いしに行こう。
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