chapter one


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そもそも、法律というようなものは
他人と自分を全く平等に捉えられれば
必要とされない代物である。



「なんて、言ったら失業だけどねぇ。」


カチカチと、ノックに応じて出入りを繰り返すボールペンを眺めながら
全く進む気配のない紙の上に頬杖をつく。


「まだやってんのかよい。」


「マ、マルコ巡査部長?!」


背後から呆れた様な声でマグカップの中身を啜りながらボヤいたマルコさんに、
無意識で背筋が伸びる。かなり厳しい指導で有名な巡査部長殿は、女の私にさえ
甘い顔など見せた事が無いのだ。


「す、すすすみませっ、すぐやります!」


「……そりゃあいいが、あと10分でお前巡回の時間じゃあねぇのかい。
それとも、10分でそのナガッタラシイ調書書き上げるってぇなら別だけどよい。
なぁ、せん?」


「ェエッ?!もうそんな時間すかっ?」


跳び跳ねる勢いで立ち上がったらキャスター付きの椅子が勢いよく下がって、
丁度側を通ったサッチ先輩の脛に強打撃を食らわせたらしく「ギャア」と
悲鳴が挙がったがそれどころでは無い。


「ったく、時間管理位ちゃんとしろよい。」


「すいませんっ、じゃ、行ってきますっ!!」


「阿呆!単独じゃあねぇだろうがっ!」



飛び出そうとした首根っこをグイと掴まれて、ゴキッと嫌な音がした。
折れたりは無いけど、思わずゾッとした。


「サッチ!モタモタしてねぇで支度しろい。」


吐き捨てる様に言い終わる頃には、若干涙目のサッチ先輩が制服を整えて
駆けて来ていた。ある意味、私よりサッチ先輩の方が不憫である。


「ぃ、いこっか!せん!」


「ぁはっ、ぃいきましょっか!」


「「アハッ、はははは……は。」」


時々思う。
仕事で対峙するどの人より
マルコさんの方がよっぽど
鬼だなって。


「せんっ!!」


「ヒィッ!は、はいっ?!」


「戻ったら一時間以内に調書しあげろい!」


「了、解っしましたーっ。」



……絶対に。





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