誕生日無視してごめんね

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春がきた。


鳥はさえずり、草木は緑を携え生い茂り

暗い暗いこの島も幾分か明るく感じる。

だって、春だから。


春になると思い出す。


「ああ、今年もまた...。」


忘れてしまったことを、思い出す。

今更いいわけをしても遅かろう。

忘れていたわけではない、何をする計画もできずに
だらだらと過ごしてしまっただけ、なんだ
言い訳にすらならない。


春麗かな陽だまりに出て、その暖かさに微笑みながら
内心の冷や汗が止まらない。


今日は、ミホークが数週間ぶりに暇つぶしから帰ってくる。


両手を広げ、どこから彼が現れようとも
私が平和そのもので暮らしていました、ありがとう。

という状態にしておけば、問題ないはずである。


閉じたまぶたに感じる暖かさ、ああ幸せ、ああ幸せ、幸せ。






「...ロージー、帰ったぞ。」






低く耳元で囁かれ、結局私の迫真の演技と本心は
見事にめくり返された。



「ごめ...ん、ミホーク。」


「何が。」


「あの、誕生日...忘れてました。ごめんなさい。」





さすがに暇つぶしにも疲れたのか、ミホークの口ひげは心なしか
少し下向きで、それを見た私の心もシュンと下を向いた。



「誕生日...フッ、何を今更。」

「知ってるんだよ、でも何も用意してなくて。」

「何年目だ、誕生日を忘れるなんて。」

「...。」

「数えんでいい。そうだな、今日一日、俺の暇つぶしに付き合うのはどうだ?」

「え、まだ暇潰すの?」

「暇がある限り、潰すさ。」

「さすが、世界最強で」

「さっさと支度をしろ。」



そういう、このての彼の暇つぶしが私は嫌いで、こればかりは
誕生日だろうと付いていきたくはない。

しかし、再会してコンマ1秒で謝ってしまった私の負けは負けだ。

行こうじゃないの、暇つぶし。







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