Love Cats

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頭が良く、要領の良い上司を持つと
仕事はとても楽である。

ウチのマルコはそんな上司
ただ見てくれは多少難ありだ

でも、男からも女からも尊敬される

稼ぎもいい

結婚適齢期、ちょい過ぎ
そんな付き合いのある企業の
女どもはかなり直球勝負を仕掛けて来たりする

だがしかし
マルコはなびかない

何故か

平日朝9時から定時18時
遅いときはテッペン越えまで一緒に居る
私が断言しよう

この人は性癖も難ありなんだと思う

いや、難ありだ








要領の良いマルコは大体遅くても
20時にはその日の仕事を全て終えている

そんなマルコに追いつけない私を待ったり
取引先の作業を待っていたりする

そんな時は大体パソコンをいじって
なにやら「よいよい」とおかしな声を上げ
カチカチとマウスのクリック音が
不気味にオフィス内に響いている

長年そんな様子を盗み見て来た私が断言しよう

この人は会社のパソコンでエロサイト見てる

そう、長年思って来た
だって顔、顔おかしいんだもん

だからこないだイタズラ心に火がついて
画面の後ろから飛び出してやった

「何エロサイト見てんすかー!しかも会社のパソコンで!」

思い通りの反応に私は腹を抱えた

慌ててノートパソコンのフタを閉めて
ちっちゃい目を見開いたマルコ

「お、脅かすなよい!」

期待通り過ぎて私の行動はエスカレート
その閉じられたパソコンを開いた


そして青ざめた


「ね...猫動画...」

「わわわ、誰にも言うなよい、」
「え、何故慌てる...」
「は、恥ずかしいよい。」
「いいじゃん、別に。てっきりハードなエロサイト見てんのかと...」
「あ?これか?」

ポチと別ウィンドウで想像を遥かに越える無修正
エロサイトなるものが飛び出してきたもので
わたしは驚きのあまりデスクから落っこちた

「な、何晒してんすか!!会社のパソコンで!」
「こんなもん、誰だって見てるだろうがよい。」
「見てないよ!てか、何?猫の方が恥ずかしいってなに!?」


恥ずかしそうに猫動画のウィンドウを消し
残されたエロサイトを平然と晒すマルコ

難あり性癖確定の瞬間である


「リタ、お前まじで、誰にも言うなよい。」

誰もいないオフィスに、マルコのヒソヒソ声
弱った、誰かに言いたい
いや、言えない
久しぶりにマルコの怖い顔を見た



その翌日からというもの

日がまだ高い時間帯はいつものマルコ
どうも夜になるとやっぱり油断しているのか
猫の動画を見ては「よいよい」と呟いている

しかも誰かが後ろを通り過ぎるときには
平然とエロサイト見てますみたいなアピール

カモフラージュ間違ってますよ

と言いたいところだが
言えない、怖い


私にバレてしまったという意識はあるようで
2人だけのときは、完全にパソコンがニャーニャー言ってて
仕事が思うように進まない


そんなある日
やっぱり2人で取り残されたオフィスで
私はその日終わらなかった仕事を片付けながら
下請けの納品を待っていた

やっぱりヒマなマルコの手元からは
ニャーニャーと卑猥な声が聞こえてくる

ため息をつきながら、私も仕事が一段落し
コーヒーを取りに行こうかと立ち上がった瞬間

マルコが血相を変えて外に飛び出して行った

納品?

と思いながら、とりあえずコーヒーを
給湯室から戻ったとき、マルコはぜえぜえと息を
切らしてオフィスの入り口に立っていた

「どうしたんすか?」
「子猫が...外にいて...よい。」

出たーねこー!!!
吹き出しそうになるのを堪え、マルコの息が整うのを待った

「ちょっと、外すよい。撫でてくる。」
「え!?」
「電話くるからよい、取っといてくれ。」


見たこともない猛ダッシュで外へ駆けて行ったマルコ
それもだいぶ、恐ろしくキモチワルかったけど

40分しても帰ってこないもので
私はそのころ退職願を書こうかとフォーマットを漁っていた


そうしてまた、満足げに帰って来たマルコは
ドカっとデスクにつくと、ニタニタとよいよい
頷いていた

見なかったことにして、雑誌を読んでいるフリをして
「電話、まだきてないっす」
それだけを伝えた

「あ、よい。」

何より辛かったのは、納品トラックが予想以上に遅れ
到着の連絡が入ったのは朝方の5時だったこと


疲れきった身体を目覚めさせる為にも
マルコと私は少しだけ紫に染まり行く空を眺めながら
寒い外で待つことにした

私は眠たかった
本当に


「お腹だけが白い黒猫でよい、俺の腕に爪立てて
上ってこようとすんだ、ミャーミャー鳴きながらよい。」
「ああ、さっきの猫ですか。」
「ウチは3匹、猫いてよい、みんなカワイイんだ...ほんと
甲乙つけがたい、でも、あーやっぱりみんなカワイイよい。」
「あー私、ペットとか飼ったことないんで。」
「クッククク、ペットじゃないよい...。」


トラック、はよ来い
眠くてなおかつ、怖い
横の人怖い


「リタ、おまえは犬の方が好きかい?」
「まー、どちらかといえば。」



「お前、猫っぽいねい。」


マルコはこの世界では幸せになんてなれない。

そんな気がした

そんな気がしたし

本日限りで退職したい。





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