溶融

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「ぅんっ・・・んー。」

小さなうなり声を上げてガイアが目を覚ましたようだ。

「ゴホッ・・・ウっ・・・。」

咳き込んで締め付けられた部分に更なる射精感を覚えたが
まだ最終地点までは到達をしない。
もう何時間とこうして腰を振っているというのに
永遠の快楽だけが俺に纏わりついてくる。

使う薬を間違えたといえばそれまでだが、
これが欲しくて使ったはずなのに
多少の後悔も脳裏をよぎる。

「・・・ロー?」

「はぁ・・・はぁ・・・何?」

「何・・・してるの。」

「セックス。」

とにかく冴えまくっている意識に
研ぎすまされた感覚
きっとこれが切れたときには、ひどい姿になってるんだろうと
よく理解しているのに、本能というものは恐ろしい。

「や、やめてよ!なんでこんな!!」

静寂の中で響いていた粘着質の高い水音に加え
金属がぶつかりあう音が加わった。
彼女の身の安全のためにも手足は手術台の四隅に繋いである。

だが意識は今
愛するガイアと一つになるという目的
ただそれだけに向かっていた。

「やっ・・・やめてよっ!アッ・・・ハァッ。」

深い眠りから醒め、ようやく自分の置かれている立場を理解したようだ。
やめて?それは無理な相談だ。
彼女の眠っている間にも、俺は何時間も彼女を見つめ
彼女に死ぬ程愛情を注いでやってる
そしてそのクライマックスまでまだあと何時間かかると思っているんだ。

愛してるから
最高を与えてやりたい
ただそれだけだ

「ハっ・・・やめねえよ。」

「いつのまにっ・・・。」

「ずっとだ、こんなの・・・いつもしてるだろ。」

「だってこんな・・・っぐ。離してよ!お願い・・・。」

「だーめ。アブねえから・・・。」

快楽と不安に染まり行く彼女の顔に触れ
自らの唇をすり寄せ
間近に感じる彼女の吐息に、しばし酔いしれた。

「何・・・言ってんの、ねえロー・・・。」

この行為に言葉はいらないとは思わないのか・・・
俺はただ愛情を感じて欲しいだけだ
顎を掴んで、よく理解できるように顔を横に逸らさせた

「あれ・・・見えるだろ。」
「・・・何。」
「チューブついてるだろ・・・。」

わずかなヒントを頼りに彼女の目線はそのチューブの続く先を辿った。
静かに回るポンプの手前から彼女の腕まで続く赤く染まったチューブ・・・

「なっ!!なんなのこれ!」
「今・・・血抜いてんの、お前の。」
「だからなんで?」
「だから、死んじゃうんだ、お前。」
「どういうことよ・・・死んじゃうって。」

さすがのお前でもわかるだろう
血が無くなれば人は死ぬんだ。

恐怖の色が加わった彼女の身体の震えに、更に快感が増し
俺はその機会を逃すまいと身を起こして、彼女の更に深い場所まで
自らを沈め込んだ。

彼女もそれに反応をみせ、さらに俺を締め上げた。

「ぐっ・・・ガイア・・・愛してる・・・あッ。」
「じゃあ、やめてよっ!こんなっ・・・イヤっ・・・。」
「死ぬの・・・怖いだろ?」
「お願いロー、もうやめて・・・。」
「俺のこと愛してるだろ・・・なあ、言えよ。」
「・・・。」

下唇をキュっと噛んで、彼女は俺を睨みつけるばかりだ

理解できない

昨日まであんなに笑顔をみせて、俺の腕に絡み付いて幸せそうに過ごしていたのに
なあ、俺の考えくらい分かってくれよ・・・ガイア・・・

「言えよっ!!」

肌に力一杯爪を立て、強くゆすった

やっと彼女は痛みを感じたのだろう

一筋の甘ったるそうな涙が彼女の頬を伝った

「愛してる・・・愛してるから、」
「もっと言え、なあ・・・もっと。」
「ロー・・・。」

これじゃまだ足りないんだ。
心からお前がそう思わないと
俺は満足しないんだ

痛みと常に共にある快楽と
恐怖と常に共にある幸福を

お前にあげる

恐怖に歪んで行く顔を見ながら、笑いが止まらなかった

「キモチイイだろ?愛してるだろ?」
「・・・。」
「愛してる?」
「愛してる・・・。」
「そうだ、ずっとそう言え・・・ククッ・・・幸せだろ?俺と一つになりたいだろ?」


ドクドクと抜かれていく血液を眺めながら
やがて筋肉の収縮も忘れ、放心していく彼女

恐怖を呼び起こさせる為に
痛みを与え続けた

拳の硬い部分を白い肌に撃ちつけ
わずかに震える耳たぶに噛み付き

そうしてまた歪む表情に、愛の言葉を言わせる

その繰り返し

そうしていれば、心から思ってくれるよな
そうだよな
愛してるよな
キモチイイよな

ひたすら、彼女の体内を味わうように
俺の思い通りの味にするために
本能が止めてくれない挿入の行為をつづけた

やがて、生気の色をわずかに残しただけの
彼女の膣内の激しい収縮が、ダイレクトに
俺に伝わってきた

綺麗だった肌に痣が目立ち始めた頃だった

「ギッ・・・ル・・・ろ・・・ろぉ・・・。」

色気もクソもない声が俺に絶頂を伝えてきた

そのときに頭を貫くような最後の射精感が俺を迎えに来た

「ハアッ・・・ガイア、もっと・・・ンッ・・・!」
「ロー・・・愛してる・・・愛してる・・・。」
「綺麗だ・・・っつ!ア”ァっ・・・。」

そのときの脱力感はすさまじかった

とても立っていられず、手術台にしがみつき
よじ上って彼女の上にまたがって息をついた

その白濁したモノがどのくらい出たとか
どんな風に飛んだかなんて見る余裕もなかった


だが問題はない
俺の本当に欲しかったもの、本当の快楽は
ここからが本題だった

もう2リットル強は抜け出てしまったガイアの血液は
無機質なプラスティックの袋に詰められていた
さすがに意識もかなり朦朧としているだろう

「死にたくねえよな・・・ガイア。」

彼女は真っすぐに上を見上げたまま、首を小さく縦に振った

「俺と・・・一つになりたいよな・・・」

既に彼女も気づいてくれたんだろう
もう彼女に首を横に振る術はないのだ

気持ちだとか、そんな科学的に根拠のない
愛はいらない
もっと形として見える愛を
お前は俺に捧げるべきだ、そうだろ



「ひとつに・・・なろう、ガイア俺の血で生きていくんだ・・・なあ、幸せだろ?
俺の血を今からやるよ・・・愛してるから・・・。」

彼女は涙を流して、首を縦に振った

彼女の額をゆっくりと撫でて、その定まらない目線を彼女の血液に向けさせた

さっきまで彼女の中を駆け巡っていた

その健気で愛らしい彼女を形作っていた
液体に・・・


「俺はあれを貰う。俺はお前の血で・・・なあ、これで互いの血が混ざりあって・・・
いつでも一緒にいられるだろ?・・・俺のこと、愛してるなら・・・幸せだよな。」


俺はガイアに語り掛けながら、両腕の上腕にきつくゴムバンドを巻きつけた


正直言って体力の限界だ
震える手を押さえつけて、なかなか振れない
静脈を探し出す

自ら両腕に穿刺し、長い長いチューブを接続させた

そして彼女の右腕にも同様に針を刺した

右側の透析のポンプが動きだし
俺の血が彼女の体内に流れ出す

彼女の左腕から針を抜き、少しの間強く押さえ血を止めた

処置は終わり

俺は彼女に覆い被さるように身を倒した

「ロー・・・寒いわ。」
「・・・血が腐るといけない、我慢しろ。」

俺の言葉に、彼女は少し笑ったような気がした

幸せの微笑みだったんだろう

俺も思わず微笑んだ

貪り合うような交わりじゃない
気持ちがなければ成り立たない関係じゃない

本質的に交わっているんだ
これ以上の愛があるか?

今の俺たち以上に
キモチイイことをしている人間は

絶対にこの世にいないだろ

俺とガイア は幸福も快楽も全て
共有している、そう血液が証明してくれている





ケミカルを接種しての快楽の追求は脳を騙せても身体は騙せない
俺は尋常じゃない時間を費やして性交していた

次第に、冴えわたっていた意識も、疲労に潰されるような感覚に陥った

だが、この幸福感を手放したくなかった

彼女の拘束された手を握り

何度も彼女の唇を啄んだ

欲情はもうなかった、愛情だけだ

愛おしくてたまらなかった

たとえ、命が尽きようとも彼女と共に居たい
そう願いながら

何度も何度も、キスをして、頬を撫で、髪に触れた






深い眠りから醒めたとき

俺の血で出来たサークルの真ん中で

俺はたった一人だった


誰が抜き取ったのか彼女の右腕から針は抜かれ

俺の血は床にぶちまけられていた









俺はもう一度、さらにもう一度

何度も何度も

彼女にキスをした。



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