Shipbuilding01

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「お呼びですか、社長。」

「んまー、ちょっと座れ。」

社長は机の引き出しから書類をバサバサと取り出すと、コーヒーテーブルにそれを積み上げた。

「カレン、これがおまえが一年間で作り上げた船の設計図、
造船許可、船舶登録やらもろもろなんだが。」

書類は私の目の高さまで積み上げられていた。

「180の造船、200の船体修理・・・パウリーだってこんな数はしねえ。」

「何かクレームでも?」

「いや、それがねえから不安なのさ。主要ドッグの大工をクビにしたとたん現れたおまえがこの働きぶりだ、正直助かってはいる。」

社長はぐっと拳を握ると、難しそうな顔をした。

「おまえを見てると・・・おれの命をねらったあいつらを思い出す。
んまーあいつらの方が、正直態度は良かったがな。」

約一年前、このガレーラカンパニーは恐ろしい事件に巻き込まれた。
社長は暗殺されかけ、その首謀者は信頼していた主要ドッグの船大工たちだった・・・。

「とにかくだ、おれが与えた休みもドッグに出てきては仕事して。てめーどういうつもりだ。」
「・・・仕事、好きなんです。」

「んまー正直、そうは見えねえ。」

「・・・なかなか信頼してくれませんね。」
「んまー信頼はしてる、だが信用はしてねえ。」
「・・・そうですか。」

「おまえに頼みたい仕事が一件ある。でかい仕事だ。」
「なんです?」
「ついてこい。」

社長は私をつれて、下町の入り江に向かった。その道すがら、嫌でもあのデカい船は私の目に入った。


それが近づくにつれ、鼓動は早くなり、口の中が乾いて行くような気がした。

((・・・ダニー!))

あの日の記憶が蘇る・・・その船が現れたその時、私の人生は真っ暗になり、わたしは絶望の淵に落とされたのだから。

「社長・・・あれ。」
「いいから来い。」

入り江に停泊する、その船はモビーディック。

私をこれ以上ないほどに傷つけた
かつての世界最強の海賊船。




「社長・・・あんまりです。」
「・・・本当に船大工として働くのなら、これを直してみせろ。おれは、おまえを信用してェんだ、カレン。」



私がこのウォーターセブンに来たとき、
私はボロボロの身体、虫の息だった。


ガレーラカンパニーの船大工たちに助けられ、今では仕事も与えられ暮らしてはいる。

誰にも素性は話さなかった。

だけど、社長だけは私の50%を見抜いた。

「・・・海軍の人間だな。」

冷たく光るその目に、わたしは戦慄した。

「・・・元、海軍ではあります。」

わたしに嘘は付けなかった。
あの事件以来、世界政府、海軍に警戒しているガレーラカンパニー、到底私を受け入れてはくれないと思った。
だったら、別にわたしは無理に働く事も無く、また海を漂流して、沈没した船たちと海の底に沈みたいとすら思った。

だけど、この社長は私に期待すると言った。

だからわたしは・・・

「おせェな、社長さん。」

モビーの上から、声が降って来た。

「ンマーすまない。久しぶりだな、マルコ。」

1番隊隊長、不死鳥マルコ・・・私が知らないはずがない、忘れもしない。
この男もあの戦場にいた・・・私は見ていた。

「どうだい、直せるかい。」
「んマー、いまからカレンが診る、この船の修理を担当させる。」
「あ?おめえがやるんじゃねーのかよい。」
「腕は一流だ、保証する。」
「女じゃねーかよい。」
「ンまー、仕事は早い。」

「そうかい、おまえが言うなら。」


特殊な語尾や口癖が飛び交いうっとうしい。

とにかく、この船を直せとは・・・社長はかなり酷なひとだ。

「じゃあ、船みせてもらいます。」
「おい、ちょ・・・愛想のねェやつだねい。」

わたしは飛び上がると、モビーの甲板に降り立った。

目が死んだ海賊がちらほら、まだ船内にいるようだ。

あの戦争で、あっちもこっちも無傷なわけがない。


この船に残る、大きな傷を見つけるたび、あの悲惨な光景を思い出す。

王下七武海・・・海軍大将たち、白ひげ海賊団、その傘下の海賊たち、それにあの麦わらの小僧に、革命軍幹部、インペルダウン脱獄囚・・・。

絶対に逆流させたくない記憶が
込み上がってくる。

正直、船を見てる場合じゃなかった。

私は耐えられず、船から飛び降りた。

「3日・・・いや2日で仕上げます。」
「んー、明日は日曜だぞ。」
「2番ドッグ、開けて下さい。お願いします。」

それだけを伝えて、私はその場を後にした。



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