ある雨の夜

わたしが幼稚園から帰ると しょうくんも ひーくんもいなかった




靴といっしょに乱暴に投げ捨てられた黒のランドセル

まめな性格のしょうくんはこんなことしない

しょうくんがいない



さがした

保育園に入れてもらっていないひーくんもどこにもいない

古いおもちゃが散乱した部屋を出ようとして 急に頭をぶたれた

二人目の母親がいた。



はしった 玄関先で錆くさいビニール傘をつかんだ

おかあさんのお腹のあたりを突いた 二度 三度

やさしかったおかあさんをかえして。



錆だらけの傘が折れた。









雨が降り始めた

わたしは歩く

使い物にならない傘を引きずりながら ずぶぬれのまま。











さびしくて思わず泣いた

置いていかれたとおもった

ひとりで



ひとりだったら

おかあさんにぶたれたら 泣いたままなにもできない。そんな気がした

庇ってくれたしょうくんも 気持ちを汲んで笑いかけてくれたひーくんも

いつのまにか いなくなっていたおとうさんや やさしかったおかあさんも

今となりにいないなんて

少し さびしいな。



何処にいっちゃったんだろう、

前はあんなにたのしいおうちだったのに。


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