その他・番外編 | ナノ
その職人、恐怖。


そうそれは、私が執事見習いとして、働き始めたころの出来事‥‥‥

その日の仕事が終了し、私達は部屋で就寝準備をしていた。
「…ねぇ、セバスチャン…」
一足先に準備の終わった私は、セバスチャンに話しかける。
「なんですか?」
ベッドの向こう側にいたセバスチャンが、顔だけこちらに向けたのを合図に、私はベッドの上に座り直し、セバスチャンと向き合った。
「いや、昨日の話なんだけどさ、昨日は夜遅くまで仕事してたでしょ?だから私結構長い間お風呂に浸かって、疲れを癒やしてたんだけど、その途中からいきなり、部屋の方から赤ちゃんの泣き声みたいなのが聞こえてきて…」
私はその声を思い出し、ブルリと震えた。
「最初は気のせいかと思ったんだけど、ずっと声は止まなくて‥‥‥」
そこまで言うと、部屋のどこかからまた、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、
「…ひっ!」
私は固まった。

「‥‥もしかして、昨日聞いた泣き声というのは、これのことですか?」
セバスチャンはまだ泣き声響く室内で、冷静にそう聞いた。
「‥う‥‥うん‥‥」
私が震えながら頷くと、セバスチャンは少し申し訳なさそうな顔をして、洋服タンスに近づいた。
「先に聞いておきますが、猫は平気ですか?」
「猫?う…うん。大丈夫だけど‥‥」
「良かった。では、開けますよ。」
そういって、セバスチャンがタンスの扉を開けると、泣き声は一層大きくなって、私は恐る恐る中を覗いた。
すると、
「へ?」
そこには大量の猫がいて、ミャアミャアと鳴き続けていた。
「どうしてこんな所に猫が?」
私はさっきの恐ろしさも忘れて、洋服タンスに向かった。
「私が飼っているんですよ。」
「飼ってる!?こんな大量に?」
「えぇ。ですが坊ちゃんが猫アレルギーをお持ちなので、隠して飼うしかなかったのですよ。」
「だから、タンスの中なんだ。」
確かに、シエルに見つかったら、捨ててこいと言われかねない。
でも、
「かわいいなぁ…」
私は黒色の毛をした猫に手を伸ばし、頭を撫でた。
猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら、私の手に擦りよった。
「でも、なんで昨日は私がお風呂に入ってる時に、突然鳴きだしたの?」
「杏子の癒やしがお風呂なら、私の癒やしは猫なのですよ。」
「つまり、私がお風呂で癒やされている間に、セバスチャンは猫と戯れて癒やされていたと。」
「えぇ。」
そう言って、セバスチャンは私と同じように、猫の頭を撫でた。
すると猫も、セバスチャンの手に擦りよって、その瞬間にセバスチャンの顔がパァッと明るく、それから薄く笑みを浮かべたから、私は見たことのないその表情に、私は何故か嬉しくなったんだ。



(この子たち、名前はないの?)(名前ですか?いえ、特には。)(じゃあ、この子はゴザエモンね。)(…え?)(この茶色いのはハナタマゴでー…)(ちょ…ちょっと待って下さい!杏子、それは本気ですか?)(?本気もなにも、ただ名前つけてるだけだけど…)(…私がつけておきます。)






コミック10巻を読んだ時に浮かんだネタ。
猫の鳴き声って夜に聞くと、赤ちゃんの泣き声に聞こえるよねっていう話。
ちなみに猫の名前は、
黒:ビター
茶:ショコラ
白:マショマロ
みたいな感じで、全部セバスチャンが決めました。

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