私、最低だ。


弱い私を見られたくないから、強がってないといけなかったから、


いつも意地を張って、セツナを困らせた。


セツナを困らせて、私は信じてあげられなかった。



『昨日、女の子と遊んでたでしょ』


『え……なんで知って……』


『やっぱり遊んでたんだ。最低! 浮気者!』


『いや、聞け。アンナ……』


『聞きたくない! どうせ私よりその子が可愛かったからとかでしょ!? セツナの顔なんか見たくない! バカ! セツナなんか死んじゃえ!』



セツナから告白されて、始めは全然その気がなかったけど付き合って。


それからは、ビックリするぐらいセツナのこと好きになってて。




一緒にいて落ち着いて、


時々ドキドキして、


愛が溢れ出してくるの。




きっと、私とセツナの相性はよかったんだと思ってた矢先。


セツナが女の子と歩いてるところを見かけた。


そのときは、恐くなって逃げ出した。


恐くて恐くて。


セツナに嫌われたと思って。


次の日、セツナに会ったとたん、想いが爆発した。



『告白してきたのはセツナのくせに! なんで私が不安にならなきゃいけないの!』



私はそう言い残して、自分の家を飛び出した。


今日は私の家でセツナが料理をしてくれる予定だった。


アンナは不器用だから、教えてあげるって。




私の家を飛び出しても、行くところなんてなかった。


外は暗くなってきてるし、おなかも空いたし。


仕方なく近くの公園に行きベンチに座ると、私はぼんやりと空を眺めていた。


携帯も忘れてきちゃったし……


ああ、もうセツナは帰ったのかな。




セツナに言いたい放題言っても、泣きはしなかったのに今更涙が出てくる。


もう、終わっちゃった。


何度かケンカしたことはあったけど、私、最低なこと言った。





「アンナ!」





聞き慣れた声に呼ばれ、私は体を強張らせた。


顔を向けると、そこには息を切らしたセツナがいた。




ああ、本当、最低だ。私。




私は立ち上がって、背中を向けて逃げ出そうとしたところを後ろから腕を掴まれ、そのままセツナの腕の中に収まってしまった。



「俺の妹だから、あれ」


「……」


「……ごめん。言ってなかった俺が悪いよな」


「……っ」



皮肉なことに、セツナに抱きしめられたらよけいに涙が溢れてきた。



「何で、私ばっかりっ、不安になるの……っ? 傷つかなくちゃ、いけないの……っ」


「ごめん……」


「セツナが傷つけばいいのに……っ」


「……俺だって、不安になるし、傷つくときはアンナ以上に傷つくよ」



私は顔をセツナに向けて、「嘘だ」と言った。


すると、セツナは悲しく笑って「嘘じゃないよ」と言った。



「『セツナの顔なんか見たくない』って言われたとき、めちゃくちゃ傷ついた」


「あ……」


「今も、そう?」



私は顔を背けて、首を横に振った。


すると、セツナがふっと笑った。



「じゃあ、帰ろうか」


「……うん」


「料理も教えてあげるよ。アンナは不器用だから」



そう言ってセツナは体を私から放し、私の右手を握った。








(大丈夫。ずっと大好きだから)





* * *





選択お題:あなたが傷つけばいいのに

提出サイト様:それは、恋した瞬間に。

ふろむ:さよならマリオネット


10/01/17  天樹


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