いつも、この時間になったらアイツはやって来る。 「まーいちゃん!」 「……きゃ!」 いきなり廊下の陰から出てきた彼に驚いて、つい廊下にしりもちをつきそうなところを彼の片腕に支えられる。 「あ、ありがと」 「どういたしまして」 にっこりと微笑む彼は、年下とは思えない。 年下と言っても1つだけだけど……。 彼は私の幼なじみ。 ちっちゃい頃から一緒で、この関係が変わることなんてないと思ってたけど…… いつからか彼のことが好きになってた。 「驚いた?」 「驚くよ! だってタケちゃん、いつも変なところから出てくるんだもん!」 えへへ、と頭をかくタケちゃんは少し大人びてるけど、やっぱり可愛い。 そのくせいつのまにか、私より身長も高くなって、すっかり男になっちゃって。 さっきだって、タケちゃんが私を支えたとき、心臓飛び出るかと思ったもん。 ドキドキして。 顔も近かったもん! 私がタケちゃんに「好き」って言ったら、タケちゃんはなんて言うんだろうなあ。 「はい、あげる」 タケちゃんから片手を出されて、反射的に私は両手を差し出した。 タケちゃんから渡されたものをみて、私は言った。 「アメ?」 「そ。とびきり甘いの。いちごみるく」 大人びた顔をしてるくせに、とびきりの甘党に思わず笑ってしまう私。 「甘そー」 「甘いのがいいでしょ。まいちゃんみたいな」 「私って、そんなに甘いの好きそうなの?」 「うん。まいちゃんみたい」 タケちゃんの言っている意味が、いまいちわからなくて首をかしげる私。 「まいちゃん可愛くて、甘そうだから」 「タケちゃん、今さらっと爆弾発言したね」 「へ? 言った?」 毎回、タケちゃんは私にお菓子のプレゼントをくれる。 なんでかわからないけど、全部甘いの。 だけど毎回、私がもらってばかりだ。 「……確かめてみる?」 「なにを?」 「甘い、かどうか」 いまいち意味がわかっていないタケちゃん。 そんなタケちゃんに私は肩に手を伸ばして、 ちゅっと軽く触れるだけのキスをした。 タケちゃんを見ると、 真っ赤な顔をして私を見てた。 君の唇は甘い (「甘かった?」) (「……はい」) (「じゃ、もう一回」) (「まいちゃん、ここ廊下だけど……」) (「うん。知ってる」) (もう心臓もちません……!) * * * お題配布様:ニコラと流星 さいと:さよならマリオネット 10/01/16 天樹 |