「ねえ、カズキ。クリスマスはどうする?」



そんな風に無邪気な笑顔を見せながら俺に尋ねてくるのは、1年くらい前から付き合っているサキ。


学校の帰り道。夕焼けのせいか、辺りがオレンジに染まっている。


隣でもくもくと「あれも、これも……」


と呟いているサキを見て、俺は微笑んだ。


それに気づいたのか、サキは不思議そうに俺を見て首を傾げる。



「どうしたの?」


「いいや、何でも」



可愛かったから、と俺は心の中で付け加えておく。



「それより! クリスマスはどうする! 何するっ!」


「テンション高いな」


「だってクリスマスってただでさえお祝いする日なのに、その上私の誕生日なんだよ! 祝ってね、カズキ!」



そうはしゃぐサキを俺は笑って見ていた。





サキはまだ知らない。





昨日俺が家に帰りリビングでくつろいでいると、それは突然に告げられた。





『カズキ、お父さんがね転勤することになったの』





それだけの台詞で俺は全てわかってしまった。





『終業式の日に出発するから、友達に言っておきなさい』





……じゃあ、“彼女”はどうするんだよ。





「ねえっ! カズキは何したい?」



何も知らないサキ。


知らないのは、わかってる。


だけど、そんな笑顔を向けられると、困る。




離したくない、よ。


だけど、


遠いんだ。


毎日会えないんだ。




ごめん。




俺、




サキと別れなきゃ。



「……カズキ?」


「サキと一緒にいれれば、なんでも」



その台詞を聞いたサキの顔はみるみる赤くなって、その顔をごまかすように俺の背中を思いっきり叩いた。



「ってえ!」


「……もう、いきなり何言うの!」



そう言って、ぽつりと呟いた。



「私もカズキと一緒にいれればいいよ……」


「ん? 何、聞こえない」



本当は聞こえてたけど。


けど、もう一度聞きたくて。


またサキは顔を赤くして俺を叩く。


そんなサキをまたからかう。




誰か、


教えてくれ。








(サキと、笑って別れられる方法を)





* * *





お題配布様:哀悼

さいと:さよならマリオネット


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