背中合わせ






夏休み真っ只中。

毎日毎日溶けてしまうんじゃないか、というくらい暑く、学校の宿題なんか手をつける気にもならない。

夏休み中にも部活は勿論ある。
真夏の体育館はとても暑く、少し動いただけで汗が滝のように流れ出る。

そんな時期に、俺の誕生日は来る。
こんな暑く中よく産まれてこれなたな、と毎年同じ事を思いながら過ごしていた。




今日は俺の誕生日、今日も部活はあり、仲間達からプレゼントを貰ったり、歌を歌って貰ったり、皆から祝ってもらった。


午後7時過ぎ、ようやく本日の練習が終わりいつものように三井サンと帰ろうと思ってふと気づいた。

(今日、あんまり喋ってないか…)

「オイ宮城。」

「もぉぉ!?」

いきなり今まさに考えていた張本人に声をかけられつい変な声が出てしまった。

「何変な声出してんだ、帰んぞ。」

そう一言いうと三井サン、と呼び止めようとする前にふいっと一人で体育館から出ていってしまった。





暫くして校門の前まで行くと自転車にまたがっている三井サンを見つけた。

「おせぇよ。」

「すいません、花道達に捕まっちゃってさ。」

ふぅーんと対して興味無さそうに目線を俺の顔から反らした。

「てか、今日自転車なんすね。」

「…たまにはな、」

「でも俺歩きっすよ?」

「2ケツすりゃいーだろうが。」

三井サンと2ケツ…!
嬉しくなって後ろに乗ろうとしたら、
思い切りチョップされた。

「ちょ、痛っ!」

「誰が後ろ乗れつった?お前がこぐんだよ。」

ま、まじすか…?















夏といっても8時近くになると日も陰り多少涼しくなる、聞こえるのはセミの鳴く声と自転車のタイヤが回る音、
海が見たい。
という三井サンのご希望で海沿いを自転車で走っているため波の音も聞こえる。

結局俺が前に乗り三井サンが背中に寄り掛かるように座っている。

「宮城もっと頑張れよ、おせーぞー。」

「じゃあアンタが替われぇぇえ!!」

はぁはぁと荒い呼吸でこぎ続ける。

(アレ、おかしいな今日俺誕生日じゃなかったっけ?)





暫く走ると下り坂になり海風を受けながら滑っていく。
汗をかいたところに冷たい風がとても気持ちい。

すると、宮城と呼ぶ声が聞こえ、前を見たまま返事をする。




ぼそぼそと呟いた声はセミの声と自転車の擦れる音でかき消されそうだったが、俺の耳にはしっかり聞き取れた。








「誕生日、おめでとう。」






今まで何度も言われてきた台詞なのになんだか凄く嬉しくて顔が緩む。

背中越しに響く声がとても心地良くてこの道がずっとずっと続いていればいいのに。
ホントにそう思った。







きっと後ろの先輩は顔を真っ赤にしているんだろうな。






こんな誕生日も悪くない。



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宮城BD記念文第二弾。