log6/はやし



池袋で慧也と静雄が2度目の接触を果たしていた約半日後、午後8時。
新宿では臨也がパソコン画面に向かって口に含んでいた紅茶を噴出しそうになっていた。
臨也は器官に入った紅茶に噎せながらディスプレイを凝視する。
今日は慧也がマンションを発ってから忙しく、漸く一息ついてこの時間だった。先程帰した波江に涙目になって咳き込む様を見られないで良かったと思う。

開かれているウィンドウはダラーズを始め、池袋の話題を中心とした諸々の掲示板。
それらを見て回っているとスレッドの消費が異様に早い話題があった。ログを辿って見てみるとどれも午前10時頃からスレが立っていて、臨也は興味本位、本当に興味本位で覗いたのだ。

そして冒頭に戻る。

【速報:池袋駅の東口出てすぐのところであの折原臨也と平和島静雄が談笑してる】【マジでww】【本当だ!でも何か違くない?いつもの黒づくめじゃないし】【何それイメチェンとか?wwww】

等々。
この話題が半日で面白いほどスレを消費している事に臨也は顔を引き攣らせる。
自分は今日はずっと缶詰であったので池袋には行っていない。そうでなくてもこの掲示板内の「折原臨也」の正体は明らかである。

(間違いなく、慧也だ…)

自分と慧也の容姿が似通っているのは自覚している。
似ているが故に比べられるのも知っている。臨也はスクロールバーにカーソルを合わせて一気に書きこまれている内容を読んでいく。
所詮は匿名の掲示板。完全な虚偽である可能性もある。
しかし掲示板に書き込まれている服装の情報は、臨也の期待も虚しく今朝がた慧也が着ていたものに酷似していた。

昨日の今日で2度目の邂逅とかエンカウント率良すぎるだろ。
しかも談笑って何だ談笑って…。
自分を見れば即自販機コースだというのに、慧也とは普通に話して普通に別れるのか。

思えば慧也はひどく静雄を気に入っている様子だった。
これから慧也はどんどん静雄に対して距離を詰めるのが目に見えている。しかも纏まった休みが取れたと言っていたから日中から街中に繰り出すのだろう。
静雄は取立てという外回りの仕事が多いから、会うことも容易い。

どうにかしなければならない。しかし、己がどうするべきか、どうしたいのか未だ明確な答えは出ないのだ。

ぐるぐると廻る思考に、臨也は綺麗に整えられた親指の爪をガジガジと噛じりながらデスクチェアーに沈み込んだ。



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