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例えば誕生日。例えばクリスマス。例えば二人の記念日。エトセトラ。必ずあなたはそばにいてくれない。誰かを追いかけて、誰かに怨まれて、あの皺一つ無い肌を歪ませて、シリウスは私のためじゃない誰かを想って、誰かのために働いてるの。そんなシリウスを尊敬してないわけじゃないし、愛してる。たまに会えるときは真っ先に抱きしめてくれる。それで十分だっていえば嘘。だけどね、もうちょっと一緒にいたいの。我が儘でごめんなさい。





『もしもし、俺。悪い、今日いきなり捜査が入ったから会えなくなった。また連絡する』


機械音が鳴って、シリウスの声が聞こえなくなる。出なかったのはわざと、居留守を使ったのもわざと。こんな時間になって連絡して来るなんて駄目になったからだってわかってるもん。「今日は絶対会おうな」って言ったじゃない、馬鹿シリウス。今日は何の日かわかってるの?付き合ってから5年目の日。私、シリウスとこんなに一緒にいられるなんて思ってなかったよ?簡単に飽きられるんじゃないかなって思ってたの。そしたらあなたは「馬鹿だな」って言って笑ったけど、それでも安心できないの。信じたい、でも私は魅力溢れる女じゃない。今、本当に仕事してるの?誰か他の女と会ってるんじゃない?あーあ自己嫌悪、こんな風に思いたくなんて無い。でも私とどれだけ会ってない?

ダイニングテーブルに並ぶ冷めた食事、これがシリウスと私の温度だったらどうしよう。被害妄想?わかってる。頑張った私が馬鹿みたい、これ全部作るのにどれだけ時間かかったんだろう?返してよ、私の時間。

ふて寝してやる、さっさと過ぎちゃえば良いんだこんな日なんて。





「……ぃ、」

「ん…」

「………おい」

「や…だ……ねる、」

「ふざけるな、起きろ馬鹿」

「いっ…た!何、」


ネクタイを少し緩め、髪が乱れているシリウスがそこにいた。「起きたか、寝ぼすけ」って微笑んで私の頭を撫でる。その笑顔や手だけで私は泣きそうになる。シリウスは更に頬を緩めておでこにキスを運んでくれるから、私はまるで子供みたいに声をあげて泣いてしまいそうになる。


「ごめんな、遅れて」

「……捜査は?」

「急いだ、今まであんなに急いだことなんてないな」

「何で、」

「俺の馬鹿名前が泣いてるかもしれないから」

「………泣いてない」

「なら安心。それに約束しただろう?絶対今年は会おうって」

「……覚えてたの?」

「当たり前だろう?名前との約束だぞ?……それに、今日中に渡したかったんだ」

「え?」

「左手の薬指に、手錠」

「な、なにそれ?」

「仕事に集中できないくらい、俺に夢中にさせてるのに不安になる罪で、俺から名前・名字に逮捕状が出てる」


「終身刑、だ」って馬鹿じゃないの。そんなあなたに夢中な私も十分馬鹿だ。その罪を笑顔で償わせて貰うね、あなたの隣で。





あなたに逮捕されるなら
(世間から見放されても悪くない)



プリムローズさま(閉鎖)に提出させて頂きました。現代パロでシリウスが警官、という素晴らしい設定。うきうきしながら執筆した記憶があります。