×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

わたしはひどく出来の悪い人間だと思う。思うっていうのはそれだけで真実に成り得るからやめた方がいい、とかテレビに出てくるお偉い心理学者やら脳科学者やらが言っているけれど、事実を述べたまでだ。だったら“思う”という動詞を使うより、落ち込むけれど、「わたしはひどく出来の悪い人間だ」と言い切った方が良いのかもしれない。

なぜわたしがこんなことを思うかというと、姉がひどく出来の良すぎる人間だったからだ。小さい頃から姉と比べられて育ち、「お姉ちゃんみたいにがんばりなさい」と言われてきたわたしにとっては、至極当然のことだったからだ。成績も、運動も、美術も、演劇も、何でも出来る姉は自慢であることと同時に、わたしにとってはコンプレックスを植え付ける存在でもあったからだ。

そんな姉が11歳のころのことだった。わたしがまだこんなにコンプレックス塗れでもなく、「わたしのねえさんはすごいのよ」と無邪気に胸を張っていられたころのことだった。1羽のふくろうが真昼間に我が家に訪れ、1通の手紙をぽとりと落とした。それは−ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されました。−というものだった。その後、そのホグワーツからのスタッフがやってきて説明をしたのち、そのまま姉はそのホグワーツに通うことになった。姉は魔女だったのだ。

父も母も姉が魔女であることに驚嘆し、わたしにも魔女の才能があることを期待した。けれど、やっぱりわたしは出来の悪い単なる人間だったのだ。手紙など1通も来なかった。姉に言わせれば「マグル」というらしい。普通の人間の方が大多数なのにマグルとかなんとか呼び方を変えるのか、と思ったけれど、わたしたちだって魔女やら魔法使いやら言っているのだから仕方がないのかもしれない。まとめると、わたしの家は魔女である姉を筆頭に、出来の悪いわたしと普通の父と母が暮らす、少々変わった家になった。



20141106