『出来た!』
名前は喚声を上げた。
そこにはふっくらと美味しそうに焼け綺麗にデコレーションされたバースデーケーキがあった。
時刻は8時ちょっと前。急いで包み手伝ってくれた屋敷下僕妖精達にお礼を良い厨房を出て寮への道を駆けた。
名前が寮に着くと既に皆起きていてドラコはスリザリンの皆に囲まれていた。
名前がドラコに声を掛けようとしたちょうどその時、パンジーが進み出てプレゼントを渡した。
受け取ったドラコにパンジーは嬉しそうに抱き着く。
そんな現場を見て十分だと思った名前は寮を出て元来た道を走った。
『ドラコの馬鹿…』
階段に座り顔を埋めて名前が呟くと
「悲しい顔してどうしたんだい、お嬢さん」
グリフィンドールの双子のウィーズリーが話し掛けて来た。
「聞くまでもないぜ、相棒。今日はあのドラコ・マルフォイの誕生日だぜ。やっこさん、せっかく作ったプレゼント渡せなかったんだよ」
フレッドが言うと
「ほう、先程からしていたこの美味しそうな匂いはプレゼントだったのか。マルフォイには勿体ないな。貰い手がいないのなら僕が貰っても良いかな?」
ジョージが箱に手を伸ばす。
名前はどうぞと言って箱を渡そうとした。
「触るな!それは僕のだ」
渡そうとした手を止めて声をする方を名前が見るとドラコが険しい顔をして立っていた。
ズカズカとやって来て名前の手にある箱を奪い取る。
『あ…』と名前が声を出すと「良かったな、名前」と頭を撫でられフレッドとジョージは行ってしまった。
階段に残された名前とドラコ。
名前は二人の後を追おうとしたがドラコに手を掴まれて叶わなかった。
「僕が楽しみにしていたものは君からのだ」
そう言って頭に手を置かれぐりぐりとされる。
『痛いよ』と涙目で訴えるとそっぽを向き「悪かった」と素直に謝られた。
その素直さに少し驚き見ると「行くぞ」と言われ手を引かれた。