「先輩、真面目にやろうと思っていますか?」
レギュラスが顔をしかめて言う。
『思ってるよ!』
マロンは頬を膨らませながら言った。
レギュラスとマロンは箒を持ってグラウンドに居る。
何故そんな所に居るかというと数時間前の会話から始まる…
『レギュラス君、レギュラス君』
真剣な顔をしてマロンがレギュラスの前のソファーに腰を下ろす。
「何ですか、先輩?」
『箒の乗り方教えて下さい』
周囲に聞こえないように小声で言った。
「え、先輩…乗れないんですか?」
レギュラスは顔を引き攣らせながら聞くが、真面目な顔つきでマロンは頷く。
「え…。先輩、それでも魔女ですか?」
『失礼な!魔法史は常にトップだよ!』
マロンは言うがレギュラスに「あんなの皆寝てるじゃないですか」とあっさりと言い返される。
『それで何時マダム・フーチに呼び出されても良いようにしたいの』
「呼び出しなんてあるんですか?」
レギュラスが鼻で笑うとマロンが涙目になった。少しバカにしすぎてしまったかもしれない。
それを見てレギュラスは「仕方ないですね」
と、ため息をつきながら腰を上げた。
そして、現在に戻る。
『おぉ!凄い…乗れた!』
手取り足取り教え2メートルの高さまで上がれるようになったマロンにレギュラスは「その調子で僕の後をついて来て下さい」と言う。
ついて行くとどんどん高度が高くなっていき、人が米粒の様なサイズに見える程の高さになった時レギュラスは止まって振り返った。
心地好い風が吹いてくる。
レギュラスは両手を広げ全身で風を受けた。
それを見てマロンも真似して両手を離したが、飛行初心者のマロンにはまだ早すぎた。
急に強い風が吹かれてマロンはバランスを崩し真っ逆さまに落ちていく。
「先輩!!!」
レギュラス咄嗟にローブから杖を出しマロン向け落下を防ぐ呪文を呟く。
5メートルほど下がったところでマロンの腕を掴み自分の前に座らせた。
「何で両手を離したんですか!」
いつもより語気を荒げてレギュラスは言った。
『レギュラスと同じ様に風を感じたくて…』
ごめんなさいと震えた声でマロンは言った。気まずい沈黙が続く。
するとレギュラスはため息をついて
「このままでは先輩は怖い思いしかしない様に思います。それでは箒に慣れる事なんて一生無理でしょう。このままホグワーツを一周するのでそれで箒に乗ることに慣れて下さい」
と言った。
高度を先程のところまで上げてマロンが乗っていた箒を回収し、湖や禁じられた森の上空を飛行した。
グランドに戻る頃にはマロンの目から涙は引っ込み、『またよろしくね』と言われた。