「ダームストラングの代表選手はビクトール・クラム」
力強いはっきりとした声で名前を読み上げる。大広間中が拍手の嵐、歓声の渦となった。
クラムはスリザリンのテーブルから立ち上がると、大広間の一番前に行き、教職員テーブルに沿って進み隣の部屋へと入って行った。
ゴブレットが再び赤く燃え上がると、2枚目の羊皮紙が落とされた。
「ボーバトンの代表選手はフラー・デラクール!」
シルバーブロンドの豊かな髪の少女が優雅に立ち上がりレイブンクローとハッフルパフのテーブルの間を滑るように進む。
『まあ!なんて綺麗な方なの!』
あまりの美しさに思わずクリスティーヌがため息をつくと、「まあ、見てよ。みんながっかりししてるわ」とハーマイオニーが耳打ちした。
残されたボーバトン生を見ると、腕に顔を埋めて泣いている子がいた。
クリスティーヌが視線をゴブレットに戻すと、赤く燃えていた。そして、溢れるように火花が飛び散ると羊皮紙を落とした。
「ホグワーツの代表選手はセドリック・ディゴリー!」
セドリックの名前が呼ばれるとハッフルパフ生は総立ちになり、叫び足を踏み鳴らした。
セドリックはニッコリと笑いながらその中を通り抜け、隣の部屋へと入って行く。
「さて、これで3人の代表選手が決まった。選ばれなかったボーバトン生もダームストラング生も含め、みんな打ち揃って、あらんかぎりの力を振り絞り、代表選手たちを応援してくれることを信じておる。選手に声援を送ることで、みんなが本当の意味で貢献できー」
ダンブルドアが突然言葉を切った。
クリスティーヌは息を呑んだ。
「炎のゴブレット」が再び赤く燃え始めたのだ。火花が迸り、空中に伸び上がった炎の先には羊皮紙を載せている。
ダンブルドアは長い手を伸ばし羊皮紙を捕らえそこに書かれた名前を見た。
両手で持った羊皮紙をしばらく眺めた後、咳払いして読み上げた。
「ハリー・ポッター」
大広間の全ての目線が一斉にハリーに向けられる。
ハリーはただ座って驚いていた。
「僕、名前入れてない」
ハリーは放心したように言った。
「ハリー・ポッター!」
ダンブルドアが再びハリーの名前をよぶ。
「行くのよ」
ハーマイオニーが隣の部屋へ行くよう促す。
ハリーは立ち上がると少しよろめきながらグリフィンドールとハッフルパフのテーブルの間を進む。
ハリーが隣の部屋へ入るのを見届けたダンブルドアは咳払いをした。
「さて、代表選手が決まった。他の者はそれぞれの寮に戻るのじゃ。夜更かしはほどほどにのう」
寮に戻ることを促さればらばらと生徒が立ち上がる。
『ハリーは年齢に達していないのに代表選手になるの?』
「年齢制限は今年に限り生徒の安全を守るために設けられただけなの。そして、ゴブレットからはハリーの名前が出た…。ゴブレットから名前が出たものは代表選手としてベストを尽くすしかない。これは規則であり、選ばれたものの義務よ」
クリスティーヌの言葉にハーマイオニーが答える。
「ハリーは自分は入れていないと言っていたわ。証拠がないから信じるほかないけれど、だとしたら誰が…何の目的で…」
『ハーマイオニー…?』
独り言のように言うハーマイオニーにクリスティーヌは声を掛けるが、聞こえなかったのかそのまま寝室へと向かった。
クリスティーヌはハーマイオニーが言っていたことが気がかりではあったが、翌日の授業に支障が出るといけないと思い、同じくベットにもぐった。