玄関ホールの掲示板の出現は、城の住人たちにはっきりと影響を与えた。
どこへ行っても「三校対抗試合」の話で持ち切りで、城の掃除が以前にも増して、念入りにされるようになっていた。

10月30日の朝、朝食におりて行くと、大広間は既に前の晩の飾り付けが済んでいた。

『いよいよね』

壁に掛けられた各寮を示す巨大な垂れ幕を見てクリスティーヌは言った。

その日の授業は、ほとんどの生徒が上の空だったので、「これでは意味がない」と、いつもより早めに切り上げる先生が多く6時まであっという間だった。

「間も無く6時だ」

ロンは時計を眺め、正門に続く馬車道をじっと見た。

『どうやって来るのかしら?汽車かな?』

クリスティーヌの問いにハーマイオニーは「違うと思う」と言った。

「じゃあ何で来る?箒かな?」

ハリーが空を見上げて言うとハーマイオニーは「それも違うわね……ずっと遠くから来るもの」と言った。

「わしの目に狂いがなければボーバトンの代表団が近づいて来るぞ!」

ダンブルドアが先生方の並んだ最後列から声を上げた。

「どこ?どこ?」

生徒たちがてんでばらばらな方向を見ながら熱い声を上げる中、クリスティーヌは森の上空から何か巨大なものがやって来るのが見えた。それはぐんぐん大きくなりながら城に向かってくる。

禁じられた森の梢をかすめた時、城の窓明かりがそれを照らした。その正体は大きな館ほどの馬車だった。

馬車がぐんぐんと高度を下げ着陸態勢に入ると、前の方にいる生徒は数メートル後ろに下がった。ドーンという衝撃音と共に天馬が地を蹴る。

馬車の戸が開くと中から大きな女性が出てきた。

「これはこれは、マダム・マクシーム。ようこそホグワーツへ」

ダンブルドアが挨拶すると女性は「おかわりありませんか?ダンブリードール」と深いアルトで答えた。

「お陰さまで上々じゃ」

「カロカロフはまだ来ませんか?」
「もうすぐ来るじゃろう」

マダム・マクシームはダンブルドアと二言三言、言葉を交わすと生徒を連れて城の中へ入って行った。

ボーバトンの生徒が城に入るのを見送ると、ロンが「何か聞こえないか?」と声を掛けてきた。

ロンの言葉に、クリスティーヌは耳を澄ませると、闇の中からこちらに向かって大きな不気味な音が伝わってきた。

「湖だ!」「湖を見ろよ!」

声に従いクリスティーヌが、湖に目を向けると、水面が突然乱れ、ボコボコと大きな泡が表面に湧き出し波が岸の泥を洗った。そして、湖の真ん真ん中が渦を巻く。渦の中心から長い竿のような物がゆっくりせり上がって来た。

「帆柱だ!」

ハリーが声を上げる。月明かりを受けて、船は水面に浮上した。その姿はまるで難破船が引き上げられたようだった。

タラップが下りて乗員が下船して来る。

「ダンブルドア!」

先頭を歩いている男性がダンブルドアに朗らかに声を掛けた。

「やあやあ。暫く。元気かね?」
「元気いっぱいじゃよ。カロカロフ校長」

「懐かしのホグワーツ城」
カロカロフは城を見上げて微笑んだ。

だが、その目が笑ってないことにクリスティーヌは気が付いた。
上滑りの良い愛想もクリスティーヌは言いようもない冷たいものを感じた。


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