ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まった学校対抗試合。ホグワーツ、ボーバトン、ダームストロングの三校から代表選手が一人ずつ選ばれ、三人が三つの魔法競技を争った。
かつては5年毎に三校が回り持ちで競技を主催した。若い魔法使い、魔女たちが国を越えて絆を築くのに最も優れた方法だとされて。しかし、夥しい数の死者が出るようになり、競技は中止された。
何世紀にもわたって中止されたこの試合が今甦る―
17歳以上という年齢制限付きで。
授業の移動中、若しくは授業中でさえも三大魔法学校対抗試合の話で持ち切りだった。
「全く、これでは皆授業に集中出来ないじゃない」
「魔法史なんてもともとハーマイオニー以外まともに聞いている奴なんていたか?先生も起きてるだけで嬉しいだろう」
「17歳以下の人は諦めるべきだわ。『老け薬』なんて使っても無駄よ」
「ウィーズリー!おーい、ウィーズリー!」
ロンとハーマイオニーが言い合いをしてると背後で大声がした。
クリスティーヌ達が振り返ると、マルフォイ、クラッブ、ゴイルが立っていた。
「何だ?」
ロンがぶっきらぼうに聞くと、ドラコは大声で「日刊予言者新聞」を読み上げ、新聞を裏返して掲げるとロンの母親まで侮辱してきた。
ハリーはロンを押さえながら言い返す。
ドラコの青白い顔に赤みが差しハリーが「減らず口を閉じろ」と言って背を向けた瞬間―
バーン!と音がした。
そして「若造、そんなことをするな!」という吼え声が玄関ホールに響いた。
何事かとクリスティーヌが振り返るとムーディ先生が大理石の階段をコツッ、コツッと下りてきた。
杖は床にいる真っ白なケナガイタチに向けられる。
玄関ホールに恐怖の沈黙が流れた。
イタチはキーキーと怯えた声を出し、地下牢の方へ逃げ出す。
「そうはさせんぞ!」
ムーディは吼え再び杖をケナガイタチに向ける。
「敵が後ろを見せた時に襲う奴は気にくわん。鼻持ちならない、臆病で、下劣な行為だ…」
ムーディはイタチが石畳にぶつかって跳ね上がる度に一語一語打ち込んだ。
クリスティーヌは震えながら
「先生、もう止めて下さい!」
と訴えた。しかしムーディは無視し、
「二度とこんなことはするな」
と言っていた。
クリスティーヌが泣きそうになった時マクゴナガル先生がショックを受けたような声でムーディの名前を読んだ。
「何をなさっているのですか?」
マクゴナガル先生は空中に跳ね上がるイタチを目で追いながら聞くと
「教育だ」
とムーディは答えた。
「ムーディ、それは生徒なのですか?」
マクゴナガル先生の問いに「左様」とムーディが答えるとマクゴナガル先生は杖を取り出しイタチに向けた。
バシッと大きな音を立ててドラコ・マルフォイが再び姿を現す。マルフォイは引き攣った顔で立ち上がった。
クリスティーヌはハーマイオニーに「もう行きましょう」と引っ張られて我に返る。
ハーマイオニーはロンにも声を掛けようとしたが断られた。
「どうして?」
ハーマイオニーが尋ねるとロンは目をつむり
「あれを永久に僕の記憶に焼き付けておきたいからさ」
と言った。
『だけど、あれは本当に怪我をさせてたかもしれないわ』
クリスティーヌが声を震わせて言うと
「マクゴナガル先生が止めてくださったから良かったのよ」
ハーマイオニーはクリスティーヌを気遣うように言う。
「ハーマイオニー、クリスティーヌ!君達ったら僕の生涯最良の時を台なしにしてるぜ!」
ロンの言葉にハーマイオニーは「もう付き合いきれないわ」と言った。