クリスティーヌとマークがドレスローブ店に入ると色とりどりのドレスが出迎えた。
『すみません。パーティ用のドレスを見たいのですが…』
クリスティーヌは店の奥に進みカウンターに腰をかけ「日刊予言者新聞」を読んでいた老人に声を掛ける。
「おおう、いらっしゃい。お嬢さん達はホグワーツかね?」
老人が新聞から顔を上げ尋ねると、
『いえ、私だけです。彼には荷物持ちを頼んでいるんです』
とクリスティーヌは答えた。老人は眼鏡を外すと、
「そうかい、そうかい。随分仲が良いみたいだね。でも感心はしないよ。クィディッチ・ワールドカップの件があったからね」
と言った。その言葉にクリスティーヌは顔を歪める。
『私も失敗したと思ったわ。先程知ったの。まさかあんなことが起こっていたなんて…でもこのお店で最後だから早めに切り上げるわ』
「その方が良い。新聞に書いてあることは誇張されてはいるが念のためにもね…。お嬢さんにはこういうのが似合うのではないかい?」
老人は店の中を歩きながら淡いピンクのドレスを出して来た。
派手ではなく、かと言って地味でもない。露出度も高くなくウェストの後ろをきゅっと締める大きなリボンは可愛らしく、全体的にふんわりとした柔らかい雰囲気をクリスティーヌは一目で気に入った。
『まあ、素敵!これにするわ』
「一目で気に入っていただけて嬉しいよ」
老人は杖を一降りし、箱に包んで大きな紙の手提げ袋に入れる。
「お帰りの際はお気を付けて」
『有難うございます』
クリスティーヌは深く頭を下げる。
「楽しい新学期を過ごせるようにね」
『貴方は今年ホグワーツで何が起こるかご存知ですか?』
帰り際にクリスティーヌが尋ねると老人は「それは新学期になってからのお楽しみだよ」と悪戯っぽく笑った。