じゆう
ため息を吐くように、鱗が一枚一枚剥がれていく。長い長い夢から覚めた小さな痛みが胸を押し潰す。
もう何が孤独で、何が自由なのか忘れてしまった。ただ囲われた硝子の箱の中で尾をばたつかせ、息をしている。
この絶望はいつまで続くのだろう。一人では死ぬこともできない私は、あまりにも惨めで、そしてこんなにも醜い。
「出たいか?自由が欲しいか?」
水槽の向こうで低く冷たい男の人の声がした。何を言っているんだろう、この人はだれ?そんなことを考えていたら、全てを見透かしたように、また声がした。
「俺は、ひろや、という。おまえは俺に飼われているペットの、ありさだ。水槽から出たいか?出たいなら出してやろう。」
私がここから出られる?水槽から出られる?私は男の言葉が体の奥に染み付いて溶けていくのを感じていた。出たい、ここから出たい。
首を縦に数回振って見せると、男の低い声が水槽のなかにまで響いた。
「あぁ、出してやる。もうこんなところで泳いでいなくてもいいんだ、ありさ。」
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