「どうしたら、鳥になれるんだろう。」

振り絞るようにそう言うと大きな瞳からポロポロと涙を溢した未稀は両手で顔を覆い、泣き出した。

屋上から見える青空は狭い。そして、手を伸ばせば届きそうな程に近く感じられる唯一の場所だ。もしかしたら、私も飛べるのではないか、あの鳥のように空を駆け抜けることが出来るのではないか、、、そう勘違いしてしまうほどに空との距離が酷く近い。

「ここにいるとね、背中にね、翼が生えたみたいな錯覚がおきるの。」

ぽつりと溢す。誰にも聴こえないよう、小さく小さく吐き捨てるように。

何の意味があるのだろう。翼のない鳥に、自由のない空に、笑えない私の顔に。
呼吸をするたびにしゃくりあげながら、校庭が見下ろせる場所までゆっくりと歩むと、未稀は嗚咽を飲み込んだ。
そして上履きを脱ぎ捨て瞳をつむる。
泣き腫らした瞳が風に当たって少しだけヒリヒリと痛い。鼻をくすぐる涙の匂いが言いようのない切なさを掻き立てた。



「私も飛べるかな。」

未稀は足を一歩踏み出すと、空に飛び込んだ。




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