少年少女の密会

ある日、図書館のいつもの場所で少年は言う。
「...次の試合で僕がスニッチを捕ったら、
僕の家のパーティに来いよ」

驚いた少女は長く波打つ髪を揺らし、少年をみて
「そんな事したらバレてしまうわ。私達のこと」
少し悲しげにそう言い、読んでいた本に目を落とした。

「パーティは仮面を付けるんだ、バレやしないさ」
ぱらり、と乾いた紙の音のなか少年は何食わぬ顔をする。

「...でも、貴方まだハリーに勝ったことが無いじゃない」
今度は少し、揶揄するような色を蜂蜜色の瞳に浮かべた少女は頬杖をついた。

「次の試合では、僕が捕る。あんな奴に負けるか」
少年は組んだ腕に力を込め、すこし口を尖らせる。

「ふふ。じゃ、仮面とドレス用意して待ってるわ」
ほんのり頬を染め、少女は窓辺に寄り掛かった少年に近付く。

ちゅ...

「次は、負けないでね。約束よ?」

ぱら ぱら ぱら。
やわらかい風にページがめくられ、カーテンはふくらむ。
その影では未だに続く、赤い顔した少年少女が密会中。

END


2014/07/28〜2015/11/16掲載 clap お礼文

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